鼠径ヘルニア(脱腸)

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鼠径ヘルニア(脱腸)とは?

そけい部は太ももの内側の付け根の部分を指します。ヘルニアはラテン語の「hernia」が語源であり、「脱出」を意味する言葉です。
鼠径(そけい)ヘルニア(通称:脱腸)とは、本来はお腹の中にあるべき臓器が、「そけい部」を通って体外に逸脱した状態を指します。
腸が出てくることが多いので、世間では「脱腸」という俗称で呼ばれます。
放置すると命に危険が及ぶ「嵌頓(かんとん)」という状態になります。

そけいヘルニアのイラスト

人体の構造上、お腹の壁は皮膚と何枚もの筋肉が重なってできています。そけい部は筋肉のすき間が空いており、そこを血管が精巣に向かって走っています。生まれつきそけい部のすき間が広く、通常はふさがるはずの袋状の構造が残っていることが原因です。
年齢を重ねて(後天性で)中年以降になる場合は、腹壁を構成する筋肉が弱まり、すき間が広くなってしまい、お腹の中の圧に耐えれなくなって腸管が押し出されることが原因です。

男性、年齢、家族歴、対側の鼠径ヘルニアの既往、前立腺摘出術後、コラーゲン代謝異常などが上げられています。

足の付け根(鼡径部)の膨らみが主症状です。押して元通りになる、膨らみからグルっと音がする等の場合は鼡径ヘルニアである可能性が高いです。膨らみがはっきりしない場合でも、鼡径部の違和感、痛み、おしっこが出にくいなどの症状の原因が鼡径ヘルニアであることもあります。

症状の写真

一度発症すると自然に治ることはありません。鼠径ヘルニア(脱腸)で腸がお腹から出たり入ったりしている時は大丈夫ですが、治療せずに放置するといずれは腸管がお腹の外に出たまま戻らない状況=「嵌頓(かんとん)」になります。
口からお尻までは一本の道であり、その道=「腸管」が外に出たままでは腸閉塞になる上に、戻らなくってから8時間経つと腸が壊死し始めます。そうなるとお腹を大きく切開する緊急手術での治療が必要になります。

救急車の写真

視触診で診断がつくことがほとんどです。当院では超音波検査を行い、膨らみの目立たない鼡径ヘルニアについても見逃しの内容努めております。また場合によってはCTスキャンをお願いすることがあります。診断がつきましたら術前検査として採血、心電図検査、呼吸機能検査を行います。

相談の写真

鼡径ヘルニアに対する根治的治療は手術しかありません。ヘルニアバンドなど膨らみにくくするように工夫する器具は市販されていますが、治療になっているわけではありません。かつては筋肉の隙間を縫い合わせて閉鎖するという方法がとられていましたが、一定数の再発がありました。現在成人の鼡径ヘルニア手術は原則、人工のメッシュを挿入して筋肉の隙間を補強するという方法がとられています。
またメッシュを置く経路も、鼡径部の皮膚を切開し直視下に修復する「前方アプローチ」と、スコープを用いて体腔内もしくは腹壁内から挿入する方法があります。私たちは腹腔鏡を用いて腹腔内からメッシュを留置する「Trans Abdominal PrePeritoneal アプローチ(TAPP法)」を採用しております。従来の開腹手術に比べ、腹腔鏡手術は術後早期回復に優れているということが広く知られております。また十分にご自身で意思決定がいただける方には、原則付き添いをお願いしておりません。日帰りで付き添い不要であることにより、手術に伴うあらゆる負担を軽減いたします。

初診時

  • 初診予約
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  • 治療方針の
    ご相談
  • 術前検査

鼠径ヘルニア(脱腸)の日帰り手術当日

  • 受付
  • 着替え・
    術前診察
  • 手術
  • リカバリー室
  • 帰宅
  • 私たちからの
    安着電話

日常復帰

  • 術後1日目

    私たちから電話にて問診を行います。

  • 術後2日目

    お身体の状態と相談の上で
    デスクワークなど無理のない範囲で
    お仕事も再開いただけます。

  • 術後7日目

    ほとんどの方は問題なく
    日常復帰いただけます。

手術後の合併症

術後すぐに起きうるものとして出血、少し時間が経ってから起きるものとして慢性疼痛、感染、漿液腫が考えられます。慢性疼痛、漿液腫は聞きなれない言葉だと思います。慢性疼痛とは術後3か月経過しても残存する疼痛と定義されます。程度はさまざまですが10%程度の方に見られると言われています。また漿液腫とは鼠径ヘルニアの膨らみがあった部分に水がたまった状態の事です。一見すると再発しているように膨らみとして触れますが、再発とは違い押し込んでも元に戻ることはありません。たまった水を抜くなどの対応を行うことで軽快します。

保険診療が適応されますので、非常に高額になったり、施設間で⼤きな差が出る事はありません。

表1
スワイプしてください
 70才以上の方70才未満の方
保険負担割合1割負担2割負担3割3割
診察のみ約1,000円約1,700円約2,500円約2,500円
術前検査約2,300円約4,600円約7,000円約7,000円
手術費用約18,000円約18,000円 ※1約118,000円 ※2約118,000円 ※2
  • ※1 自己負担は18,000円が上限となります。
  • ※2 高額療養費制度により負担が軽くなる事があります。

高額療養費制度とは、ひと月で医療機関や薬局の窓口で支払った額が上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。上限額は、年齢や所得によって異なります。

表2
所得区分(年収の目安)自己負担限度額(目安)
770万円以上約110,000円
370~770万円82,000円
370万円未満57,600円
非課税世帯35,400円