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所 為然外科部長

女性の鼠径ヘルニア② -前方切開?腹腔鏡手術?-

皆様こんちには、大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニックです。

以前、女性鼠径ヘルニアのリスク因子に関する研究についてご紹介しました。

女性の方が男性よりも鼠径ヘルニアになるリスク因子を多く持っている、という結論でした。

つまり相対的に、やはり男性の方が鼠径ヘルニアになりやすい、ということになります。



本日ご紹介する論文も女性の鼠径ヘルニアに関する研究ですが、女性が鼠径ヘルニアになった場合、どの術式が適しているのか、という臨床疑問への回答になります。

タイトル「Female sex and ipsilateral reoperation risk following mesh-based inguinal hernia repair: a cohort study including 131,626 repairs in adults from an integrated healthcare system over a 10-year period」

PMID:37682377(Google scholarでも見つけれます)

 

【目的】
異なる鼠径ヘルニア修復アプローチ(開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット手術)後の再手術のリスクについて、女性と男性を比較すること。

 

【方法】
デザイン:後ろ向きコホート研究(2010~2020年)
対象:米国の統合医療システムにおいてメッシュを用いた鼠径ヘルニア修復術を初めて受けた18歳以上の全患者
解析:性別と追跡期間中の同側再手術リスクとの関連を評価した。

解析は手術アプローチ(開腹、腹腔鏡、ロボット)により層別化し、多重Cox比例ハザード回帰モデルを用いた。

 

【結果】
期間中にメッシュを用いた鼠径ヘルニア修復術は131,626例であり、10,079例(7.7%)が女性であった。
交絡因子の調整後、女性は男性よりも開腹鼠径ヘルニア修復術後の再手術リスクが高かった(ハザード比[HR]=1.98、95%CI 1.74-2.25)が、腹腔鏡修復術後の再手術リスクは低かった(HR = 0.70、95%CI 0.51-0.97)。

ロボット手術後の粗5年累積再手術確率は男性で2.8%、女性では再手術は観察されなかった。

再手術を受けた女性のうち、10.3%(39/378例)が大腿ヘルニアであったのに対し、男性では0.6%(18/3110例)に過ぎなかった。

 

【結論】
メッシュを用いた鼠径ヘルニア修復術を受けた患者の大規模な多施設コホートにおいて、開腹修復アプローチ後の再手術リスクは男性に比べて女性で高いことがわかった。

女性では低侵襲アプローチ(腹腔鏡やロボット)による再手術の方が低リスクであったが、これはこれらのアプローチにより潜因性大腿ヘルニアを同定できるためと考えられる。

 

[COMMENT]
予想通りの結果と言えます。
切開法の主流であるリヒテンシュタイン法では、内鼠径輪と鼠経管後壁を覆えます。

しかし、大腿輪を覆う事はどうしてもできません。

従来のクーゲル法やダイレクトクーゲル法と同じ層にメッシュを敷くTAPPやTEP法であれば、大腿輪も覆えて、大腿ヘルニアでの再発も防ぐことができます。

女性であれば整容性の観点からも低侵襲手術を用いるべきだt

当院では、全身麻酔可能な症例には全て腹腔鏡による修復術を行っています。大腿ヘルニアでの再発のリスクも低く維持できております。

著者

外科部長
所 為然Yukinari Tokoro

略歴

2010年3月 広島大学医学部医学科卒業
2010年4月 成田赤十字病院
2012年4月 千葉大学医学部付属病院肝胆膵外科
2014年4月 千葉県がんセンター消化器外科
2017年4月 大阪赤十字病院消化器外科
2022年12月 MIDSクリニック開院
2024年2月 外科部長就任

資格

外科学会専門医/消化器外科学会専門医/消化器がん外科治療認定医/緩和ケア講習会修了

所属

日本外科学会/日本消化器外科学会/日本臨床外科学会/日本医癌学会/日本内視鏡外科学会/日本食道学会/日本ヘルニア学会/日本臨床栄養代謝学会

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