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鼠径ヘルニア
所 為然院長

入院手術と日帰り手術

皆様こんにちは、大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニックです。

鼠径ヘルニアといえば鼠径部(足の付け根)にしこりを触れる病気です。

この記事では、鼠径ヘルニアの治療で、入院手術と日帰り手術にわけて解説します。

 

鼠径ヘルニア(脱腸)とは?

体は筋肉という壁の覆われていますが、一枚板の筋肉ではなく、何枚かの筋肉が立体的に壁を構築しています。

鼠径部では筋肉に隙間が空いている箇所があります。

その隙間から腹膜が袋状に皮膚の下まで脱出するのが鼠径ヘルニアであり、袋の中に腸管が出ると患者様は「鼠径部の膨らみ」として感じます。

典型的な症状は、立ったり、お腹に力を入れたりすると鼠径部に膨らみが出て、横になると消失します。

鼠径ヘルニアは自然に治ったり、自力で治すことはできません。治療には手術が必要です。

鼠径ヘルニアは放置すると徐々に大きくなるだけでなく、「嵌頓」という状態になる事があります。

嵌頓とは、文字通り、嵌り込んで、頓挫した、を指します。

この状態になってしまうと、腸閉塞と腸管虚血を起こし、腸が壊死してしまって腹膜炎に至ります。

(右側)小腸がヘルニア門から体壁外へ脱出している状態

 

手術って入院が必要だよね?

手術といえば、1週間ほどの入院が必要と多くの方が思うかもしれません。

実際、私が医師になった2010年ころは、殆どの手術は入院で行われていました。

 

入院が必要な主な理由としては、術後にご飯が食べれないことです。特に高齢の方では影響が大きく出ます。

入院していれば電解質が入って点滴を行いますので、摂食できずとも脱水の心配はありません。

 

次に重要な理由としては傷の痛みです。

かつての時代は "The greater surgeon, the greater incision" という言葉があるほど、大きく切り開いて手術を行う事が一般的でした。

しかし、傷が大きければ術後の痛みも強く、自分でトイレに行くことも困難です。

痛みに比例して使われる麻薬性鎮痛薬の量も増えて、食事摂取の再開も送れます。

 

入院にデメリットはあるの?

入院するのが当たり前の時代ではそのデメリットにはあまり着目されませんでしたが、以下のようなデメリットがあります。

  1. 時間的コスト:入院は数週間から週ヶ月を要し、当然ですがこの期間は仕事や通常の社会生活を営むことが出来ません。また、入院する時間を捻出するための準備も大変だと思います。
  2. 金銭的コスト:病気の治療費は、手術や薬剤だけでなく、入院費用も加わります。国民皆保険と高額医療費制度がある日本では患者様の自己負担額の上限が決められています。しかし入院するとアメニティや部屋代などの自費部分も馬鹿にならない数字です。そして何より仕事ができない期間が生じるため収入が減るリスクがあります。
  3. 院内感染:近年では衛生環境も良くはなりましたが、それでも院内感染はよくみられます。病棟内の器具やシーツに住み着いた菌もあれば、他の患者様から感染症を貰う(インフルエンザやコロナ)可能性も生じてしまいます。
  4. 術後譫妄:術後の痛みや患部の違和感が、入院という普段と異なる環境と相まって、術後に譫妄になる方がいます。術後譫妄の一番厄介なところは、認知機能障害に発展する可能性があるということです。

 

日帰り手術のメリット

私が初めて日帰り手術を行うクリニックがあると知ったのは医師3年目、2013年でした。

当時、既に欧米では大腸癌根治術でも日帰り手術が行われていましたが日本でははまだ普及しておらず、認知度も低かったです。

 

日帰り手術は、時間的金銭的コストを省略できるだけでなく、院内感染や術後譫妄のリスクを負う事もありません。

これを知った時は非常に感動した記憶あります。

 

日帰り手術が出来る対象疾患は限られ、"術後に栄養と水分を経口摂取できること" を満たす必要があります。

 

近年、日帰り手術を行うクリニックはどんどん増えております。その一因は、腹腔鏡手術の普及です。

腹腔鏡手術であれば、最低限の創で治療が出来るため、術中に使う麻薬性鎮痛薬の量も少なく、術後は問題なく経口摂取ができます。

 

従来の鼠経ヘルニアの手術は3泊4日の入院が必要でした。現在でも殆どの病院は入院手術しか行っておりません。

しかし、前述のように、極端に全身状態が悪い方でない限り、鼠径ヘルニアの手術は必ず日帰りで行えます。

 

現在、当院では鼠径ヘルニア、虫垂切除、胆嚢摘出、臍ヘルニア、陰嚢水腫を対象に日帰り手術を行っております。

 

まとめ

この記事では入院手術と日帰り手術の違いについて解説しました。

低侵襲手術の普及により、日帰り手術は適応が広がっております。

 

当院は鼠径ヘルニアの日帰り手術を専門とするクリニックです。

 

鼠径部(足の付け根)のしこりは様々な病気が考えられ、当院では鼠径ヘルニア以外の疾患についても責任をもって鑑別診断や治療を行います。

 

平日は21時まで診療し、土日祝日も診療しております。

電話やLINEで24時間相談を受け付けております。

いつでもお気軽にご相談ください。

著者

院長
所 為然Yukinari Tokoro

略歴

2010年3月 広島大学医学部医学科卒業
2010年4月 成田赤十字病院
2012年4月 千葉大学医学部付属病院肝胆膵外科
2014年4月 千葉県がんセンター消化器外科
2017年4月 大阪赤十字病院消化器外科
2022年12月 MIDSクリニック開院

資格

外科学会専門医/消化器外科学会専門医/消化器がん外科治療認定医/緩和ケア講習会修了

所属

日本外科学会/日本消化器外科学会/日本臨床外科学会/日本医癌学会/日本内視鏡外科学会/日本食道学会/日本ヘルニア学会/日本臨床栄養代謝学会

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