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医療
田村 卓也副院長

臍ヘルニアの治療

私達は鼠径ヘルニアを主に診療させていただいておりますが、臍ヘルニア(いわゆる出臍(でべそ))についてもたびたびお問い合わせいただき、手術も行わせていただいています。

臍ヘルニアは生きていく過程で脆弱になった臍の筋膜の隙間に、肥満、妊娠、大量腹水などによる腹腔内圧上昇が加わることで発症するといわれています。自然に治ることはなく、嵌頓(内臓がはまり込んでとれなくなること)が生じることがあるため早期に手術を行うことが望ましいといわれています。

手術は大きく分けると2通りの治し方があります。メッシュを使用するか、使用しないかです。メッシュを使用しない場合は臍部分に出来た腹直筋の筋膜が欠損している部分を糸で縫い閉じて内臓が飛び出さないようにします。メッシュを使用する場合はこの筋膜が欠損している部分をメッシュでふさぎます。

メッシュを使用するかどうかは筋膜欠損の大きさで判断されているケースが多いと思います。実際我々も患者さんと相談の上ですが、どちらで行うかは筋膜欠損の大きさで決定しています。

メッシュを使用することで、筋膜を縫い合わせるよりも臍ヘルニアが再発する可能性は低くなります。一方でメッシュが留置されるので、仮にその後消化管を切る手術を受けられる場合には感染に気を付けなければなりません。

腹腔鏡手術の発展により多くの消化管の手術も腹腔鏡で行われるようになりました。ただ多くの腹腔鏡の手術では臍に創を作ります。場合によっては臍から切除した消化管を取り出すこともあります。

このようなときにメッシュがあるのと、ないのとでは感染をリスクが変わってくると思います。すなわちメッシュの感染を心配しないといけなくなるということです。メッシュは人工物ですので、免疫担当の細胞も中に侵入しにくく、細菌が繁殖するのをなかなか抑えられません。場合によってはメッシュを外さないと感染のコントロールがつかないということもあり得ます。

このようなことを加味すると、大きな臍ヘルニアでなければ、まずは筋膜の縫合閉鎖を行うことも正しいように思えます。あとは個々人の考え方になると思いますので、当院では十分に患者さんと話し合ったうえでどのように手術するかを決定しています。

何を求めて当院に来られたのかを明確にし、できるだけお応えする臍ヘルニアに限らず、鼠径ヘルニア、虫垂炎、胆嚢結石等を含むすべての診療に通ずるものであると考えます。

まずは十分ご理解いただいた上で、安心してお任せいただくというのが医療の在り方だと思います。

著者

副院長
田村 卓也Takuya Tamura

略歴

2012年3月 川崎医科大学医学部卒業
2012年4月 川崎医科大学附属川崎病院
2014年4月 大阪赤十字病院
2022年12月 MIDSクリニック入職

資格

外科学会専門医/内視鏡外科学会技術認定医/癌治療認定医/JATEC(外傷診療研修)修了/緩和ケア講習会修了

所属

日本外科学会/日本消化器外科学会/日本内視鏡外科学会/大腸肛門病学会/日本ヘルニア学会/日本臨床外科学会

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