医師紹介・院長ブログ
- ホーム
- 医師紹介・院長ブログ
- 鼠径ヘルニア手術と尿閉
論文紹介鼠径ヘルニア
田村 卓也院長
鼠径ヘルニア手術と尿閉
鼠径ヘルニアの術後に尿閉(おしっこが出にくくなること)が起きることがあるといわれています。
鼠径ヘルニア修復術後の尿閉は全世界で5.9%~38%と報告されています。
この予防として術前にα遮断薬(前立腺肥大等に使用される薬剤、降圧効果もある)を使用することで術後の尿閉を減らせるのかを検証した論文です。
Prophylactic alpha‑blockade for prevention of post‑operative
urinary retention after inguinal hernia repair: a systematic review
and meta‑analysis
8個のランダム化比較試験(RCT)が組み込まれたメタアナリシスです。
この研究ではα遮断薬の術前投与は全体としては尿閉の発生を抑制しなかった。と報告としていますが、
60歳以上の方に限るとα遮断薬の術前投与は尿閉を改善したと報告されています。
また別のサブグループ解析として興味深いのが、私たちの行っている腹腔鏡を用いた手術は、
前方アプローチの手術よりも尿閉が少なかったと報告されています。
この論文の結論としてはα遮断薬の術前投与は60歳以上の方には尿閉予防効果が期待できるとしています。
もちろん術後の合併症は尿閉だけではないですが、ご高齢の方であるほど腹腔鏡手術はお勧めできるのではないかとも思いました。
当院では帰宅前のチェックリストとして、排尿があったかどうかを確認するようにしております。
スタッフもその意義を理解しており、一丸となって治療にあたっています。
日帰り腹腔鏡手術は皆様に安心して手術を受けていただくための一つの手段と考えております。