1. ホーム
  2. 医師紹介・院長ブログ
  3. 女性の方が多い鼠径部ヘルニア ~大腿ヘルニアに関する最新の報告~
論文紹介鼠径ヘルニア
所 為然外科部長

女性の方が多い鼠径部ヘルニア ~大腿ヘルニアに関する最新の報告~

はじめに - 鼠径部の解剖

鼠径部(そけいぶ)は、お腹の下方、太もものつけ根にあたる部分です。この部分には、腹腔内から脚へと続く重要な血管や神経が通る通路があり、その構造は男女で異なることが知られています。特に女性の場合は、解剖学的な特徴として鼠径管が細く、また大腿輪(だいたいりん:大腿ヘルニアの出口となる部分)が男性より広いことが特徴です。

鼠径ヘルニア(脱腸)とは

鼠径ヘルニア(脱腸)は、この鼠径部の筋肉や腱膜が弱くなることで、腹腔内の臓器(主に腸管や腹膜)が飛び出してしまう病気です。日本では年間約15万件の手術が行われている一般的な疾患です。

年齢とともに筋肉が弱くなることで発症リスクが高まりますが、重い物を持ち上げる作業が多い方や、便秘で力むことが多い方、また喫煙者の方なども発症リスクが高いとされています。一度発症すると、自然治癒することはなく、多くの場合、手術による治療が必要となります。

 

大腿ヘルニアについて

大腿ヘルニアは、鼠径部ヘルニア(脱腸)の一種ですが、以下のような重要な特徴があります:

 

特徴と重要性

  ・鼠径部のやや下方(大腿動静脈の近く)に発生します

  ・女性に多く見られ(男性の4倍の発生率)、特に50歳以上の女性に多いとされています

  ・嵌頓(かんとん:腸が戻らなくなる状態)のリスクが高く、この場合、緊急手術が必要となります

  ・一般的な鼠径ヘルニア(脱腸)と比べて、より重篤な合併症を引き起こす可能性があります

診断が難しい理由

  1.膨らみが小さい場合が多く、外から見て分かりにくい

  2.従来の前方からの診察では見つけにくい位置にある

  3.初期症状が軽い、もしくは無症状の場合もある

  4.鼠径ヘルニア(脱腸)と症状が似ているため、誤って診断される可能性がある

 

見逃しのリスク

大腿ヘルニアは、従来の前方からの手術では見逃されやすく、そのために再手術が必要になるケースが報告されています。最新の研究では、前方からの手術を受けた後に再手術となった女性患者の約20%で、実は大腿ヘルニアが原因だったことが判明しています。

腹腔鏡手術の重要性と利点

腹腔鏡手術は、おへその周りに小さな穴を開けて、特殊なカメラと手術器具を使用して行う最新の手術方法です。この手術方法には、以下のような大きな利点があります:

 1.より正確な診断が可能

  ・後方からの視野が得られるため、大腿ヘルニアの発見が容易

  ・両側を同時に観察できる

  ・小さなヘルニアも見つけやすい

 2.手術の質が高い

  ・繊細な手術操作が可能

  ・再発率が低い

  ・メッシュ(人工補強材)の留置が理想的な位置に可能

 3.患者さまの負担が少ない

  ・傷が小さい(5-10mm程度)

  ・術後の痛みが少ない

  ・日帰り手術が可能

  ・早期の社会復帰が可能

当院からのメッセージ

大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニックでは、この研究結果を重視し、特に女性患者さまに対して腹腔鏡手術を積極的に推奨しています。当院の腹腔鏡手術は日帰りで受けることができ、術後の痛みも最小限に抑えられます。

以下のような症状がある方は要注意

  ・鼠径部の膨らみ

  ・立っているときに増強する違和感

  ・座るとおさまる痛み

  ・つっぱり感 特に女性の患者さまは、大腿ヘルニアの可能性も考えられますので、早めの受診をお勧めします。

情報提供元

大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニック

所在地:〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田1丁目2番2-100号 大阪駅前第2ビル 1階

電話番号:06-6341-5570

 

著者

外科部長
所 為然Yukinari Tokoro

略歴

2010年3月 広島大学医学部医学科卒業
2010年4月 成田赤十字病院
2012年4月 千葉大学医学部付属病院肝胆膵外科
2014年4月 千葉県がんセンター消化器外科
2017年4月 大阪赤十字病院消化器外科
2022年12月 MIDSクリニック開院
2024年2月 外科部長就任

資格

外科学会専門医/消化器外科学会専門医/消化器がん外科治療認定医/緩和ケア講習会修了

所属

日本外科学会/日本消化器外科学会/日本臨床外科学会/日本医癌学会/日本内視鏡外科学会/日本食道学会/日本ヘルニア学会/日本臨床栄養代謝学会

一覧へ戻る