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虫垂炎論文紹介
田村 卓也院長
魚の骨による虫垂炎の症例報告 〜早期発見・早期治療の重要性〜
大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニックのブログをご覧いただき、ありがとうございます。
今回は、2024年に米国の医学雑誌「JACEP Open」に掲載された興味深い症例報告をご紹介します。 [出典:Foreign body complication. JACEP Open. 2024;5:e13288]
症例の概要
50歳の男性が、10日間続く右下腹部の痛みで救急外来を受診しました。症状には以下のようなものがありました:
- 吐き気と嘔吐
- 発熱
- 排尿時の不快感
検査で分かったこと
CTスキャン検査で、なんと虫垂(いわゆる「盲腸」)の中に魚の骨が見つかりました。さらに:
- 周囲に膿がたまっている
- 血液検査で炎症反応が上昇 という状態でした。
治療と経過
急性虫垂炎と診断され、開腹手術で虫垂を切除しました。手術では虫垂に穴が開いているのが確認され、術後5日で退院されたとのことです。
この症例から学ぶこと
- 異物誤飲は意外と多い!
- 救急外来でよく見られる症状です
- お子さんが80%を占めます
- 特に日本では魚食文化があるため、魚骨の誤飲に注意が必要です
- 早期発見が重要
- CT検査は魚骨の発見に非常に有効です
- 虫垂に異物が詰まると、以下のような合併症のリスクがあります:
- 急性虫垂炎
- 穴があく(穿孔)
- 膿瘍ができる
- おなかの中全体に炎症が広がる(腹膜炎)
当院からのメッセージ
この症例では発症から10日が経過していたため、開腹手術が必要になりました。魚骨による虫垂炎のような緊急性の高いケースは、残念ながら当院での対応は困難です。このような場合は、すぐに救急病院での受診をお勧めします。
一方で、通常の虫垂炎については:
- 初期であれば、抗菌薬による保存的治療が選択できます
- ただし、_再発する可能性がある病気_であることも知っておく必要があります
- 再発予防のために**予定手術(待機的虫垂切除術)**を選択することもできます
当院では、このような_待機的な虫垂切除術_を、腹腔鏡を使った傷の小さな日帰り手術で実施しています。
以下のような方は、手術についてご相談ください:
- 過去に虫垂炎の治療歴がある
- 保存的治療で軽快したが、再発が心配
- 予防的な手術を検討したい
ただし、以下のような緊急性の高い症状がある場合は、すぐに救急病院を受診してください:
- 強い右下腹部痛が続く
- 38度以上の発熱がある
- 激しい吐き気や嘔吐がある
- 最近魚を食べて骨を飲み込んだ可能性がある
特に_「最近魚を食べて、なんとなく違和感が残っている」_という方は、医師に相談する際にその情報をお伝えください。
当院では、待機的な虫垂炎手術について、患者さまに負担の少ない方法をご提案しています。ご不安な点がありましたら、まずはお気軽にご相談ください。