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虫垂炎論文紹介
田村 卓也院長

急性虫垂炎の治療選択肢を考える:保存的治療と手術療法の最新エビデンス


2024年10月に発表された最新の研究論文『Long-term outcomes following non-operative management of acute appendicitis: A population-based analysis』(Annals of Surgery誌)の内容をご紹介します。

■ なぜこの研究が重要なのか? 急性虫垂炎は、従来は「緊急手術が必要な疾患」と考えられてきましたが、近年では抗生物質による保存的治療も選択肢として認められつつあります。この研究では、15年以上にわたる約15万人のビッグデータを解析し、保存的治療の実際の効果と安全性を検証しています。

■ 研究で分かったこと

  1. 保存的治療を選んだ場合の経過
  • 30日以内に再度治療が必要になる確率:10%
  • 1年以内:33%
  • 5年以内:36%
  1. 手術が必要になるケース
  • 緊急手術が必要になる確率は5年で12%(従来の報告より低い)
  • 予定手術を選択する患者さんが多い(5年で21%)
  • 複雑な虫垂炎の場合は予定手術を選ぶ確率が高い(37%)

■ この研究から見えてくること

  • 保存的治療は、適切な患者さんを選べば安全な選択肢となり得ます
  • 緊急手術が必要になるリスクは、これまで考えられていたより低いことが分かりました
  • 多くの患者さんが計画的な予定手術を選択しています

■ 日本での治療を考える際のポイント

  • 高齢化社会における低侵襲治療の選択肢として重要
  • 医療費の観点からも検討する価値があります
  • ただし、抗生物質の使い方や入院期間など、日本の医療事情に合わせた対応が必要です

【当院からのメッセージ】 当クリニックでは、急性期を脱した後の待機的腹腔鏡下虫垂切除術を日帰りで実施しています。この研究結果からも、急性期の治療を終えた後に計画的に手術を受けることの利点が示されています。

気になる症状がある方、保存的治療後の手術をご検討の方は、お気軽にご相談ください。経験豊富な専門医が、患者さん一人一人に最適な治療法をご提案させていただきます。


参考文献: Telesnicki T, et al. Long-term outcomes following non-operative management of acute appendicitis: A population-based analysis. Annals of Surgery, 2024.

著者

院長
田村 卓也Takuya Tamura

略歴

2012年3月 川崎医科大学医学部卒業
2012年4月 川崎医科大学附属川崎病院
2014年4月 大阪赤十字病院
2022年12月 MIDSクリニック入職
2024年2月 MIDSクリニック院長に就任

資格

外科学会専門医/内視鏡外科学会技術認定医/癌治療認定医/JATEC(外傷診療研修)修了/緩和ケア講習会修了

所属

日本外科学会/日本消化器外科学会/日本内視鏡外科学会/大腸肛門病学会/日本ヘルニア学会/日本臨床外科学会

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