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論文紹介鼠径ヘルニア
田村 卓也院長

鼠径部ヘルニア診療ガイドライン2024連載


メッシュの固定方法に関する最新のエビデンス 〜自己固定型メッシュは本当に優れているのか?〜

こんにちは。大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニックです。

当院のブログでは、日本ヘルニア学会が2024年に発表した『鼠径部ヘルニア診療ガイドライン2024』で引用されている重要な研究論文を、わかりやすく解説していきます。

今回はメッシュの固定方法に関する研究を紹介します。

■論文情報 "An analysis of results in a single-blinded, prospective randomized controlled trial comparing non-fixating versus self-fixating mesh for laparoscopic inguinal hernia repair" (Surgical Endoscopy, 2019)

■研究の概要 この研究では、鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術で使用する2種類のメッシュ(補強用の人工素材)を比較しています:

  • 従来型メッシュ:固定が必要なタイプ
  • 自己固定型メッシュ:表面に微細な突起があり自然に固定されるタイプ

270名の患者さんを対象に、以下の項目を詳しく調べました:

  • 手術時間
  • 術後の痛み
  • 生活の質(QOL)
  • 合併症
  • 再発率

■興味深い研究結果 予想に反して、自己固定型メッシュを使用した患者さんの方が:

  • 術後1-3日目の痛みが強かった
  • 術後3週間と1年後の生活の質は両者で差がなかった
  • 手術時間も同じ(約34分)でした
  • 再発はどちらも0件でした

■ガイドラインでの位置づけ この研究は、ガイドラインの重要なクリニカルクエスチョン「腹膜全修復法においてメッシュ固定は推奨されるか?」に対する根拠の一つとなっています。

ガイドラインでは、メッシュ固定を必ずしも行う必要はないとの条件付き推奨がなされています。

■当院の対応について 当院では、この研究結果も踏まえ、メッシュの固定には縫合を採用しています。タッカー(ホッチキスのような器具)による固定は術後の痛みの原因となる可能性があるため、使用していません。

■まとめ 高価な自己固定型メッシュが必ずしも優れているわけではないことが、この質の高い研究で明らかになりました。当院では、この研究結果も参考に、患者さん一人一人に最適な治療を提供しています。

鼠径ヘルニアでお悩みの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。豊富な手術実績と最新のエビデンスに基づいた治療をご提供いたします。

著者

院長
田村 卓也Takuya Tamura

略歴

2012年3月 川崎医科大学医学部卒業
2012年4月 川崎医科大学附属川崎病院
2014年4月 大阪赤十字病院
2022年12月 MIDSクリニック入職
2024年2月 MIDSクリニック院長に就任

資格

外科学会専門医/内視鏡外科学会技術認定医/癌治療認定医/JATEC(外傷診療研修)修了/緩和ケア講習会修了

所属

日本外科学会/日本消化器外科学会/日本内視鏡外科学会/大腸肛門病学会/日本ヘルニア学会/日本臨床外科学会

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