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虫垂炎論文紹介
田村 卓也院長

急性虫垂炎の新しい治療選択肢:抗生物質治療の1年後の成果と再発予防の考え方

急性虫垂炎の治療に関する最新研究

皆さま、こんにちは。大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニックです。今回は、急性虫垂炎の治療に関する最新の研究成果についてお話しします。

研究の概要

最近、イギリスの医学雑誌「World Journal of Surgery」に掲載された研究論文が、虫垂炎治療の新たな可能性を示しています。この研究は、Hannah Javanmard-Emamghissiらによって行われ、抗生物質治療を受けた虫垂炎患者の1年後の経過を追跡したものです。

研究の主なポイント

抗生物質治療の効果:

  • 1年後、71%の患者が手術を回避できました。
  • 手術が必要になった患者でも、多くは12日以内に手術を受けました。

治療方針の決定に役立つ指標:

  • 「糞石」(便が固まったもの)の有無
  • 「Adult Appendicitis Score(AAS)」という診断スコア

注意が必要な患者:

40歳以上の方は、がんのリスクが若干高くなるため、より慎重な経過観察が必要です。

AASスコアとは?

AASスコアは、痛みの症状、身体所見、血液検査の結果などから、虫垂炎の可能性を数値化するものです。スコアが高いほど、虫垂炎の可能性が高くなります。

今後の課題と治療の選択肢

この研究は、虫垂炎治療の選択肢が広がる可能性を示していますが、まだ課題も残されています。例えば、日本の医療システムでの実現可能性や、高齢者への適用についてはさらなる検討が必要です。

重要な点として、この研究の1年の観察期間中に約30%の方(3人に1人)が再燃し、結局手術を受けています。このデータは、抗生物質治療後の再発リスクを考慮する必要性を示しています。

特に、重要な予定(海外旅行や大切な仕事のプロジェクトなど)を控えている方にとっては、再発予防としての待機的虫垂切除も有効な選択肢となる可能性があります。

当院の提供する治療

当院では、このような再発予防を目的とした待機的な日帰り腹腔鏡下虫垂切除術も提供しています。この手術は、低侵襲で回復が早いのが特徴です。過去に虫垂炎の既往がある方や、再発のリスクを最小限に抑えたい方は、ぜひご相談ください。

初期治療を受けた後、手術が必要と判断された場合や、再発予防を検討される場合は、当院での待機的手術をご検討いただけます。

早期受診の重要性

虫垂炎の症状(右下腹部の痛み、発熱、吐き気など)がある方は、早めに医療機関を受診することが大切です。適切な診断と治療方針の決定には、専門医の判断が不可欠です。

最後に

健康に不安がある方、過去の虫垂炎の再発が心配な方は、どうぞお気軽に当院にご相談ください。患者さんの生活スタイルや希望を考慮しながら、最適な治療法や予防策を一緒に考えていきましょう。

著者

院長
田村 卓也Takuya Tamura

略歴

2012年3月 川崎医科大学医学部卒業
2012年4月 川崎医科大学附属川崎病院
2014年4月 大阪赤十字病院
2022年12月 MIDSクリニック入職
2024年2月 MIDSクリニック院長に就任

資格

外科学会専門医/内視鏡外科学会技術認定医/癌治療認定医/JATEC(外傷診療研修)修了/緩和ケア講習会修了

所属

日本外科学会/日本消化器外科学会/日本内視鏡外科学会/大腸肛門病学会/日本ヘルニア学会/日本臨床外科学会

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