1. ホーム
  2. 医師紹介・院長ブログ
  3. 腹膜透析患者さんの鼠径ヘルニア(脱腸)手術:安全性と長期効果の新たな可能性
論文紹介鼠径ヘルニア
田村 卓也院長

腹膜透析患者さんの鼠径ヘルニア(脱腸)手術:安全性と長期効果の新たな可能性


腹膜透析患者における鼠径ヘルニア手術の安全性について

大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニックの皆様、こんにちは。今回は、腹膜透析を受けている患者さんの鼠径ヘルニア(脱腸)手術に関する興味深い研究についてお伝えします。

最近の研究論文の紹介

最近、「Safety of hernia sac resection in inguinal herniorrhaphy for patients on peritoneal dialysis: a case series」というタイトルの論文が発表されました。この研究は、腹膜透析患者さんの鼠径ヘルニア手術における新しい可能性を示しています。

研究の概要

目的
腹膜透析患者さんの鼠径ヘルニア手術で、ヘルニア袋(腸が飛び出す袋)を切除することの安全性を調べました。

方法

  • 対象期間:2002年から2020年までの18年間
  • 対象患者:16人
    • 最初の5人は一時的に血液透析に切り替えて手術
    • 残りの11人は腹膜透析を続けながら手術

研究結果

  • 16人中14人でヘルニア袋を切除
  • 手術後の問題は特に見られず
  • 約3年半の観察期間中、ヘルニア再発者はいない
  • 手術後も平均して約1年9ヶ月腹膜透析を継続可能

結論

腹膜透析患者さんでも、ヘルニア袋を切除する手術は安全に行えそうです。手術後すぐに腹膜透析を再開でき、長期間続けられる可能性があります。この研究は、これまで懸念されていた問題(透析液が漏れる、感染する、再発するなど)が起きにくいことを示唆しています。特に日本では、高齢化に伴い腹膜透析患者さんが増えると予想されるため、非常に意義のある研究結果といえるでしょう。

研究の限界と今後の課題

ただし、この研究にはいくつかの限界があります。

  • 対象人数が少ないこと
  • 比較する別のグループがないこと

今後はより大規模な研究や、異なる手術方法との比較研究が期待されます。

まとめ

当院は鼠径ヘルニア(脱腸)の日帰り腹腔鏡手術を専門としています。通常、私たちはメッシュを用いた腹腔鏡手術を主に行っておりますが、今回ご紹介した研究は、腹膜透析患者さんという特殊な状況下での治療法として非常に興味深いものです。この研究で報告されているのは、メッシュを使用しにくい腹膜透析患者さんに対して、従来の組織修復法を用いて良好な結果を得たというものです。

当院ではこのような手法を主に採用しているわけではありませんが、患者さんの状態に応じて最適な治療法を選択することの重要性を再確認する貴重な情報として、この論文を紹介させていただきました。

鼠径部(足の付け根)の膨らみ、しこりは鼠径ヘルニア(脱腸)かもしれません。平日は21時まで診療し、土日祝日も診療しております。電話やLINEで24時間相談を受け付けております。いつでもお気軽にご相談ください。

著者

院長
田村 卓也Takuya Tamura

略歴

2012年3月 川崎医科大学医学部卒業
2012年4月 川崎医科大学附属川崎病院
2014年4月 大阪赤十字病院
2022年12月 MIDSクリニック入職
2024年2月 MIDSクリニック院長に就任

資格

外科学会専門医/内視鏡外科学会技術認定医/癌治療認定医/JATEC(外傷診療研修)修了/緩和ケア講習会修了

所属

日本外科学会/日本消化器外科学会/日本内視鏡外科学会/大腸肛門病学会/日本ヘルニア学会/日本臨床外科学会

一覧へ戻る