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論文紹介鼠径ヘルニア
田村 卓也院長

成人の鼠径ヘルニア(脱腸)の原因!先天性?それとも後天性? - 最新研究からわかったこと


皆さま、こんにちは。大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニックの院長です。今回は、鼠径ヘルニアの原因に関する興味深い研究結果をご紹介します。

新たな研究成果の紹介

最近、「Hernia」という学術誌に掲載された「The etiology of indirect inguinal hernia in adults: congenital or acquired?」(Jiang ZP et al., 2015)という論文が、鼠径ヘルニアの世界に新たな視点をもたらしました。この研究の目的は、成人の間接鼠径ヘルニアが生まれつきのものなのか、それとも後から発症するものなのかを明らかにすることでした。

研究方法の概要

  • 対象者: 間接鼠径ヘルニアの患者50名と、直接鼠径ヘルニアの患者50名(全て成人男性)を対象に調査しました。
  • 観察内容: 手術中にヘルニアの袋(ヘルニア嚢)と精巣に続く管(精索)の特徴を詳しく観察しました。
  • 顕微鏡検査: 切除したヘルニア嚢を顕微鏡で詳しく調べました。

主な発見とその解釈

  • 発見1: 間接鼠径ヘルニアの患者88%において、ヘルニア嚢の付け根に特殊な厚みのある組織が見つかりました。この部分では、ヘルニア嚢と精索がくっついていました。
  • 発見2: この厚みのある組織の57%で、平滑筋という筋肉の一種が見つかりました。
  • 発見3: 直接鼠径ヘルニアの患者では、これらの特徴は見られませんでした。

これらの発見から、研究者たちは次のように考えました:

  • この特殊な厚みのある組織は、赤ちゃんの時にあった管(精巣鞘状突起)が閉じた後の名残である可能性が高い。
  • つまり、成人の間接鼠径ヘルニアの多くは、生まれつきではなく、後から発症する病気である可能性が高い。

結論と今後の課題

この研究結果は、従来の「鼠径ヘルニアは生まれつきの病気」という考え方に疑問を投げかけるものです。ただし、この研究にも限界があり、さらなる検証が必要です。

高齢化社会における影響と重要性

日本の高齢化社会では鼠径ヘルニアの患者が増えています。この研究結果は、新しい予防法や治療法の開発につながる可能性があります。また、私たち医療従事者にとっても、手術中の新たな注意点となるかもしれません。

最後に皆さまへ

鼠径部の違和感や膨らみを感じたら、早めの受診をおすすめします。当院では、最新の研究成果を踏まえた上で、患者さま一人ひとりに最適な治療を提供しています。日帰りの腹腔鏡手術も行っておりますので、お気軽にご相談ください。

皆さまの健康と、鼠径ヘルニアに関する理解が深まることを願っています。ご質問があれば、いつでもお問い合わせください。

鼠径部(足の付け根)の膨らみ、しこりは鼠径ヘルニアかもしれません。平日は21時まで診療し、土日祝日も診療しております。電話やLINEで24時間相談を受け付けております。いつでもお気軽にご相談ください。

著者

院長
田村 卓也Takuya Tamura

略歴

2012年3月 川崎医科大学医学部卒業
2012年4月 川崎医科大学附属川崎病院
2014年4月 大阪赤十字病院
2022年12月 MIDSクリニック入職
2024年2月 MIDSクリニック院長に就任

資格

外科学会専門医/内視鏡外科学会技術認定医/癌治療認定医/JATEC(外傷診療研修)修了/緩和ケア講習会修了

所属

日本外科学会/日本消化器外科学会/日本内視鏡外科学会/大腸肛門病学会/日本ヘルニア学会/日本臨床外科学会

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