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論文紹介:TAPP vs. Lichtenstein法. 仕事復帰の観点から
皆様こんちには、大阪うめだ鼠経ヘルニアMIDSクリニックです。
本日ご紹介する論文は「Return to Work in Patients With Unilateral Inguinal Hernia Surgery: A Comparative Study Between Laparoscopic Transabdominal Preperitoneal Approach and Lichtenstein Tension-Free Mesh Repair」です。
和文タイトル:「片側鼠径ヘルニア手術患者の職場復帰:Laparoscopic Transabdominal Preperitoneal ApproachとLichtenstein Tension-Free Mesh Repairの比較研究」(PMID:37378228)
【背景】
腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(TAPP)はLichtenstein法(鼠径部切開法)と比較し、回復が早く、早期に仕事へ復帰できる。
しかし、外科医がTAPPを習得するまでには長い時間を要し、パキスタンでは医療資源も不足するため、広く普及しているとは言えない。
【目的】
本研究の目的は、TAPPとLichtenstein法の職場復帰率と再発率について比較する事である。
この研究の結果が、患者さんがより自身のニーズに合った手術を選択する際の材料になると思われる。
[COMMETN]
日本と違い、腹腔鏡手術を受けるハードルが高い国もあります。
そのような医療資源が限られた地域において、腹腔鏡手術をより必要とする人に提供する事も重要かもしれません。
【方法】
Aga Khan University Hospitalで2016年5月1日~2017年4月30日までに行われた前向き観察研究です。
TAPP群とLichtenstein群は各30人づつ集める予定。患者さんは自身の選びたい術式を選択した。
Outcomeは術後1週間後の活動性と、1年と3年後の再発とした。
【結果】
TAPP群30人とLichtenstein群30人が研究期間中追跡された。TAPP群における職場復帰までの平均日数は5.33±4.46日、Lichtenstein群では6.83±4.58日であり、p値は0.657であった。A群では3年後に1回の再発が認められた。
[総括COMMENT]
職場復帰までの平均日数はTAPP群の方で短かったが、統計的有意差はありませんでした。
サンプルサイズが小さいのに背景が調整されていないので、当然の結果です。
これがランダム化比較なら方群30人でも良いですが、患者さんが術式を選択するので、より仕事を休みたくない人がLichtenstein法を選択するバイアスがかかってしまうと思います。
とはいえ、仕事復帰までの時間をOutcomeにした既存研究は少ないので、今後はもっとサンプルサイズを大きい観察研究か、ランダム化研究が待たれます。