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鼠径ヘルニアとは ~脱腸と違う?専門医が解説!~
こんにちは、鼠径ヘルニアの日帰り手術を専門とするMIDSクリニックです。
本日は、鼠径ヘルニアという病気について詳しく解説します。
鼠径ヘルニアとは~脱腸ともよばれる病気~
足の付け根には、胎児期に精巣(睾丸)が降りてくる際にできた通り道(鼠径管)があり、解剖学的に脆弱な部分です。
日常生活での腹圧の上昇により、おなかの中の臓器(主に腸管や腹膜)が鼠径管を通って飛び出してくる病気を鼠経ヘルニアと言います。
一般的には「脱腸(だっちょう)」とも呼ばれていますが、これは医学用語ではなく、腸が飛び出る状態を表す俗称です。
実際に飛び出してくる臓器としては、小腸や大腸などの腸管が最も多いのですが、それ以外にも大網(腸の表面を覆う脂肪組織)や腹膜(おなかの中を覆う膜)が飛び出すこともあります。
女性の場合には、まれに卵巣が飛び出してくることもあります。これらの臓器は、腹膜に包まれた状態(ヘルニア嚢)として飛び出してきます。
鼠径ヘルニアの疫学~どれくらいの人がなる病気なの?~
鼠径ヘルニアは比較的よくある病気で、一生涯で男性の約27%、女性の約3%が発症するとされています。
特に男性に多い理由は、先述の精巣が降りてくる通り道の存在が関係しています。
発症年齢の特徴として、はっきりとした「2つのピーク」があります。
1つ目のピークは小児期、特に1歳未満の乳児期です。2つ目のピークは50歳以降の中高年期で、年齢とともに発症率が上昇していきます。
小児の場合は先天的な要因で、高齢者の場合は加齢に伴う筋力低下や結合組織の脆弱化が原因となることが多いです。
また、鼠径ヘルニアの手術は消化器外科領域で最も頻度の高い手術であり、日本では年間約15万件も行われています。
これは、鼠径ヘルニアと診断された方の約75%が手術を選択していることを意味します。
つまり、4人に3人は手術による治療を受けており、それだけ確立された治療法であることを示しています。
鼠径ヘルニアの原因~こんな方がなりやすい~
鼠径ヘルニアになりやすい要因として、以下のような条件が挙げられます:
加齢による筋力低下や腹壁の脆弱化が主な原因です。
特に、重い物を持つ仕事や激しい運動をされる方、慢性的な咳がある方、便秘で力むことが多い方は発症リスクが高まります。
また、肥満の方や妊娠・出産を経験された方も注意が必要です。
喫煙も発症リスクを高める要因の一つとされています。これは、喫煙により結合組織が弱くなることが原因と考えられています。
鼠径ヘルニアの症状~こんな症状があったら要注意~
最も特徴的な症状は、足の付け根の膨らみです。立った時や力んだ時に膨らみが大きくなり、横になると自然に引っ込むことが多いのが特徴です。
初期は痛みを伴わないことが多く、そのため放置されやすい病気です。
進行すると、違和感や痛みを感じるようになります。痛みが生じる理由は主に以下の3つです。
1つ目は、飛び出した臓器が周囲の組織を引っ張ることで、その刺激が痛みとして感じられます。
2つ目は、ヘルニアの部分の筋膜や腹膜が徐々に伸展されることで炎症が起こり、これが痛みの原因となります。
3つ目は、飛び出した腸管が圧迫されることで腸管の血流が悪くなり、これが痛みを引き起こします。
特に長時間立っていたり、重い物を持ち上げたりした時に症状が強くなるのは、腹圧が上がることでこれらの状態が悪化するためです。
また、痛み以外にも、お腹が張る、吐き気がする、便秘になるといった症状が出ることがあります。
これらの症状は、飛び出した腸管の動きが悪くなることで起こります。
特に痛みが強く、吐き気や嘔吐を伴う場合は要注意で、腸管が絞られている可能性があるため、すぐに医療機関を受診する必要があります。
鼠径ヘルニアの経過~放置したらどうなる?~
鼠径ヘルニアは、時間とともに徐々に進行する病気です。初期は小さな膨らみだけですが、放置すると次第に大きくなっていきます。
膨らみが大きくなるにつれて、日常生活での不快感や痛みも強くなっていきます。
最も注意が必要なのは「嵌頓(かんとん)」と呼ばれる状態です。これは、飛び出した腸が戻らなくなり、血流が悪くなって腸が壊死してしまう重篤な状態です。
この状態になると緊急手術が必要となり、場合によっては生命に関わる危険な状態となることもあります。
一方、嵌頓を免れたとしても、放置し続けることで「巨大鼠径ヘルニア」に進行するリスクがあります。
巨大鼠径ヘルニアとは、膨らみの大きさが10cm以上になった状態を指します。このような大きさになると、以下のような深刻な問題が生じます:
まず、見た目の問題です。下着や衣服が通常通り着用できなくなり、外出時の服装に大きな制限が生じます。
また、歩行時に膨らみが太腿に当たって摩擦が生じ、皮膚のかぶれや痛みの原因となります。
さらに、多くの腹腔内臓器が飛び出すことで、おなかの中の臓器の位置関係が変化してしまいます。
これにより、食事の際にすぐにお腹が張る、便秘や排尿障害が起こるなどの症状が出現します。
また、長期間の放置により、おなかの中の空間が小さくなってしまう(腹腔容量が減少する)ため、手術による修復が通常の場合より困難になり、手術時間が長くなったり、術後の回復に時間がかかったりする可能性が高くなります。
鼠径ヘルニアの治療~手術でしか治らない~
鼠径ヘルニアの治療は、基本的に手術による治療が必要です。残念ながら、運動や薬物療法では根本的な治療はできません。
ヘルニアベルトによる圧迫は一時的な対症療法として使用されることがありますが、根本的な治療にはなりません。
現在の標準的な手術方法は、メッシュ(人工補強材)を用いた術式です。この手術は、破れた筋膜を補強し、再発を防ぐことができます。
また、近年では日帰り手術も可能な腹腔鏡手術も普及してきており、患者さんの負担を最小限に抑えた治療が可能になっています。
手術後は、多くの方が翌日から歩行可能で、1週間程度で日常生活に復帰できます。
鼠径ヘルニア(脱腸)でお悩みの方は当院にお任せください
大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニックでは、患者さん一人一人の状態に合わせて最適な手術方法を選択しています。
豊富な経験を持つ専門医が、年齢や活動性、ヘルニアの種類やサイズなどを総合的に判断し、それぞれの症例に応じて柔軟に対応させていただいております。
気になる症状がある方は、早めの受診をお勧めします。当院では、日帰り腹腔鏡手術を専門としており、必要に応じて両方の手術方法に対応可能です。
丁寧な説明と、安全な手術を心がけておりますので、お気軽にご相談ください。