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鼠径ヘルニア
田村 卓也院長

鼠径ヘルニア(脱腸)の原因について~よくあるご質問にお答えします~


こんにちは。大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニックです。

当院は鼠径ヘルニア(脱腸)の腹腔鏡下手術を専門に行うクリニックです。

安心安全な日帰り手術を提供いたします。

 

診療している中でよく質問をいただきます。

「鼠径ヘルニアになる原因は何ですか?」

「脱腸には何でなるの?」

本日のブログではこれらの質問にお答えします。

 

鼠径ヘルニアとは何か?

鼠径ヘルニアは、一般的に「脱腸(だっちょう)」とも呼ばれる病気です。これは、お腹の中の臓器や脂肪組織が、足の付け根(鼠径部)の筋肉や筋膜の弱い部分から飛び出してくる状態を指します。

主に以下のような特徴があります:

 

 ・足の付け根部分が膨らむ

 ・立っているときに膨らみが目立つ

 ・膨らみが手で押し込める

 ・横になると膨らみが引っ込むことがある

 ・重いものを持ち上げたときに膨らみが増す

 

このような症状がある場合には鼠径ヘルニアの可能性が高いと言えます。そして鼠径ヘルニアは自然に治ることはなく、現在治療法は手術しかありません。

 

右鼠径ヘルニアのイメージです。

押して膨らみが消えたらほぼ鼠径ヘルニア確定です。

 

鼠径ヘルニアになり易い人

鼠径ヘルニアの発症リスクは、生活習慣や職業によって大きく異なることがわかっています。特に以下のような方は注意が必要です。

立ち仕事が多い職業の方

研究データによると、1日6時間以上の立ち仕事をされている方は、鼠径ヘルニアの発症リスクが高まることが判明しています。特に以下の職種の方は要注意です:

 ・美容師・理容師

 ・調理師

 ・工場作業員

 ・接客業の方

重量物を扱う仕事の方

1日の中で4000kg以上の重さのものを持ち上げる作業がある方は、鼠径ヘルニアのリスクが上昇します。すなわち腹圧が繰り返しかかることで、鼠径部の組織が徐々に弱くなるためです。

 

 

ご高齢の方

 

加齢に伴い、以下のような変化が起こるため、鼠径ヘルニアのリスクが高まります:

 ・筋肉の衰え

 ・筋膜の弾力性低下

 ・腹壁の組織の脆弱化

特に内鼠径ヘルニアは、ほとんどの場合が高齢の方に発症します。これは、加齢による組織の変化が大きな要因となっているためです。

その他のリスク要因がある方

 ・慢性的な咳がある方

 ・便秘で力むことが多い方

 ・喫煙習慣のある方

 ・前立腺肥大などで排尿時に力む方

これらの条件に該当する方は、定期的に鼠径部の状態をチェックすることをお勧めします。

ただし、これらのリスク要因があったとしても、必ずしも鼠径ヘルニアを発症するわけではありません。

しかし、鼠径部に違和感や膨らみを感じた場合は、早めに専門医への相談をお勧めします。

早期発見・早期治療により、より安全で確実な治療が可能となります。

 

鼠径ヘルニアの原因について

 

鼠径ヘルニアの原因は、タイプによって大きく異なることが最新の研究により判明してきました。2つある鼠径ヘルニアのタイプの内鼠径ヘルニア外鼠径ヘルニア、それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。

 

内鼠径ヘルニアの主な原因

 

内鼠径ヘルニアは、主に加齢と生活環境による影響で発症します。具体的には以下の要因が関係しています。

 

加齢による組織の変化

 

加齢に伴い、鼠径部の組織にさまざまな変化が起こります:

 ・内側三角という筋肉のない部分が徐々に弱くなっていきます

 ・筋肉を覆う膜(筋膜)が年齢とともに弾力性を失い、伸びやすくなります

 ・つまりこれらの変化により腹壁の支持力が低下し、内臓が押し出されやすい状態になります

 

過度な腹圧の影響

 

日常生活やお仕事での以下のような状況で、腹圧が過度にかかることも原因となります:

 ・立ち仕事を長時間続けることによる持続的な負荷

 ・重いものを繰り返し持ち上げる動作

 ・慢性的な咳や便秘により、腹圧が上昇する状態が続くこと

 

外鼠径ヘルニアの原因

 

外鼠径ヘルニアについては、最近の研究で従来の定説を覆す新しい発見がありました。

 

後天的な要因の重要性

 

これまで外鼠径ヘルニアは「生まれつきの病気」と考えられてきましたが、最新の研究で新しい事実が判明しています:

 ・成人の多くは後天的に発症することがわかってきました

 ・加えて特殊な組織構造の変化が関与している可能性が指摘されています

 

解剖学的な特徴による影響

 

外鼠径ヘルニアの発症には、人間特有の解剖学的な特徴が深く関係しています。いわば、人間であることそのものがリスク要因となっているとも言えます:

 ・内鼠径輪と呼ばれる部分の構造が関係しています

 ・精巣に関連する組織の構造により、特に男性は解剖学的に弱点を持っています

 ・男性の場合、胎児期に精巣が下降する際にできた通り道が、ヘルニアの経路となりやすい構造となっています

 ・人間が二足歩行をする動物であることに起因しており、ある意味で生まれつきのリスク要因と言えます

まとめ

鼠径ヘルニアの主な原因は以下の通りです:

内鼠径ヘルニアの原因

 ・加齢による内側三角(筋肉のない部分)の脆弱化

 ・筋膜(筋肉を覆う膜)の弾力性低下

 ・腹圧の上昇(長時間の立ち仕事、重いものを持つ作業など)

外鼠径ヘルニアの原因

 ・人間特有の解剖学的構造(二足歩行による影響)

 ・特に男性は精巣に関連する組織構造により発症リスクが高い

 ・後天的な組織の変化

なりやすい人の特徴

 ・長時間の立ち仕事(1日6時間以上)がある方

 ・重量物を扱う作業(1日4000kg以上)がある方

 ・高齢の方

 ・慢性的な咳や便秘のある方

このように原因が明らかになってきていますが、解剖学的な特徴など生まれもった要因も大きく、残念ながら完全に予防することは困難です。また、一度発症した鼠径ヘルニアは、手術による治療以外に根本的な治療法はありません

最後に当院では、患者さまの負担を最小限に抑えた日帰り腹腔鏡手術を行っております。鼠径部の違和感や膨らみでお悩みの方は、お気軽にご相談ください

 

情報提供元

大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニック

所在地:〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田1丁目2番2-100号 大阪駅前第2ビル 1階

電話番号:06-6341-5570

 

著者

院長
田村 卓也Takuya Tamura

略歴

2012年3月 川崎医科大学医学部卒業
2012年4月 川崎医科大学附属川崎病院
2014年4月 大阪赤十字病院
2022年12月 MIDSクリニック入職
2024年2月 MIDSクリニック院長に就任

資格

外科学会専門医/内視鏡外科学会技術認定医/癌治療認定医/JATEC(外傷診療研修)修了/緩和ケア講習会修了

所属

日本外科学会/日本消化器外科学会/日本内視鏡外科学会/大腸肛門病学会/日本ヘルニア学会/日本臨床外科学会

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