1. ホーム
  2. 医師紹介・院長ブログ
  3. 急性虫垂炎の新しい診断方法:治療方針決定に役立つスコアリングシステムの開発
虫垂炎論文紹介
所 為然外科部長

急性虫垂炎の新しい診断方法:治療方針決定に役立つスコアリングシステムの開発

急性虫垂炎の診断における最新の研究成果について

皆さま、こんにちは。大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニックの院長です。今回は、急性虫垂炎の診断に関する最新の研究成果をご紹介します。この内容は、Scientific Reports誌2024年2月号に掲載された論文「Development and validation of a new scoring system to discriminate between uncomplicated and complicated appendicitis」に基づいています。

急性虫垂炎とは?

急性虫垂炎は、よくある腹部の急性疾患ですが、その重症度によって治療方針が大きく変わります。軽症(非複雑性)の場合は抗生物質治療で改善する可能性がありますが、重症(複雑性)の場合は手術が必要となることが多いです。

新しい判断基準(スコアリングシステム)の開発

この研究では、CTスキャンの結果と患者さんの症状を組み合わせた新しい判断基準(スコアリングシステム)が開発されました。299人の患者さんのデータを分析し、以下の6つの要素が重要であることがわかりました:

  • 年齢
  • 体温
  • 血液検査でのCRP値(炎症の指標)
  • 虫垂石の有無
  • 虫垂や膿瘍の大きさ
  • 周囲の脂肪組織の変化

スコアリングシステムの精度

これらの要素を点数化し、12点を境界線としたところ、複雑性虫垂炎を約83%の確率で正しく判断できました。さらに、別の100人のデータでも同様の結果が得られ、この方法の信頼性が確認されました。

研究の限界と今後の展望

この研究には、規模が小さいことや後ろ向き研究であることなど、いくつかの限界がありますが、今後さらに大規模な研究で検証されることが期待されます。

日本での診断環境と今後の応用

日本では、虫垂炎の診断にCTスキャンが広く使われているため、このシステムを導入しやすい環境にあります。これにより、患者さんにとって最適な治療方法を素早く決定できる可能性があり、医療資源の効率的な利用にもつながるでしょう。

当院での治療方針

当院では、虫垂炎の待機的日帰り腹腔鏡手術を行っています。もし腹痛でお悩みの方は、早めの受診をおすすめします。このような最新の診断方法を参考にしながら、患者さん一人ひとりに最適な治療方針を提案させていただきます。少しでも気になる症状がある場合は、遠慮なくご相談ください。

健康で快適な毎日を過ごせるよう、私たちがサポートいたします。

著者

外科部長
所 為然Yukinari Tokoro

略歴

2010年3月 広島大学医学部医学科卒業
2010年4月 成田赤十字病院
2012年4月 千葉大学医学部付属病院肝胆膵外科
2014年4月 千葉県がんセンター消化器外科
2017年4月 大阪赤十字病院消化器外科
2022年12月 MIDSクリニック開院
2024年2月 外科部長就任

資格

外科学会専門医/消化器外科学会専門医/消化器がん外科治療認定医/緩和ケア講習会修了

所属

日本外科学会/日本消化器外科学会/日本臨床外科学会/日本医癌学会/日本内視鏡外科学会/日本食道学会/日本ヘルニア学会/日本臨床栄養代謝学会

一覧へ戻る