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論文紹介鼠径ヘルニア
田村 卓也院長

鼠径ヘルニア手術後の合併症予測:高齢者におけるリスク要因と最新の対策

みなさん、こんにちは。大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニックです。今回は、鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術後に起こりうる合併症について、最新の研究結果をもとにお話しします。

研究の概要

最近発表された研究では、鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術(TAPP法)を受けた60歳以上の患者さん330名を対象に、手術後に起こる可能性のある「漿液腫(しょうえきしゅ)」や「血腫(けっしゅ)」のリスクを予測するモデルが開発されました。漿液腫は手術部位に液体がたまる状態で、血腫は血液がたまる状態のことを指します。どちらも手術後によく見られる合併症です。

研究でわかったこと

  • 合併症の発生率: 約15.5%(330人中51人)の患者さんに漿液腫や血腫が見られました。
  • リスクを高める要因:
    • 肥満
    • 血液をサラサラにする薬の使用
    • 炎症反応の高さ(CRPという指標で測定)
    • 栄養状態や炎症の指標(アルブミン/フィブリノーゲン比、リンパ球/単球比)
  • 予測モデルの精度: これらの要因を組み合わせた予測モデルは、約88%の精度で合併症のリスクを予測できることがわかりました。

研究の意義

この研究により、個々の患者さんのリスクをより正確に予測できるようになり、リスクの高い方には、より丁寧な術後ケアを提供できる可能性があります。この結果は、高齢化が進む日本社会において、特に重要な意味を持つといえます。

当クリニックからのメッセージ

この研究結果は、私たち医療者にとって非常に参考になりますが、患者さんお一人おひとりの状況は異なります。当クリニックでは、この研究結果を参考にしつつ、患者さんの年齢や体調、生活習慣などを総合的に考慮し、最適な治療とケアを提供しています。鼠径ヘルニアでお悩みの方や手術後の経過が気になる方は、ぜひ一度当クリニックにご相談ください。日帰り手術の専門クリニックとして、最新の知見と技術を活かし、安全で快適な治療を提供いたします。お気軽にお問い合わせください。皆様の健康と笑顔をサポートいたします。

鼠径部(足の付け根)の膨らみ、しこりは鼠径ヘルニアかもしれません。平日は21時まで診療し、土日祝日も診療しております。電話やLINEで24時間相談を受け付けております。いつでもお気軽にご相談ください。

 

【参考文献】
本記事で紹介した研究内容は以下の論文に基づいています:
Ge Y, Zhou Y, Liu J, Shen W, Gu H, Cheng G. A nomogram prediction model for postoperative seroma/hematoma in elderly subjects after TAPP. Hernia. 2024. https://doi.org/10.1007/s10029-024-03134-5
この論文は、鼠径ヘルニアの腹腔鏡下経腹的腹膜前修復術(TAPP)後の合併症予測に関する最新の研究成果を報告しています。詳細な情報や専門的な内容については、原著論文をご参照ください。

著者

院長
田村 卓也Takuya Tamura

略歴

2012年3月 川崎医科大学医学部卒業
2012年4月 川崎医科大学附属川崎病院
2014年4月 大阪赤十字病院
2022年12月 MIDSクリニック入職
2024年2月 MIDSクリニック院長に就任

資格

外科学会専門医/内視鏡外科学会技術認定医/癌治療認定医/JATEC(外傷診療研修)修了/緩和ケア講習会修了

所属

日本外科学会/日本消化器外科学会/日本内視鏡外科学会/大腸肛門病学会/日本ヘルニア学会/日本臨床外科学会

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