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鼠径ヘルニア
田村 卓也院長
腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術に役立つ教科書~縫合結紮の教科書~
はじめに
現代医療の驚くべき進歩の一つ、腹腔鏡手術。この手術法は患者さんにとって負担が少なく、回復も早いことで知られています。しかし、その裏には医師たちの絶え間ない努力と練習があることをご存知でしょうか?今回は、特に腹腔鏡下での縫合・結紮(けっさつ)という技術に焦点を当て、医師たちがどのように技術を磨いているのかをご紹介します。
腹腔鏡手術とは?
腹腔鏡手術は、おなかに小さな穴を開け、細い棒状のカメラ(腹腔鏡)と専用の器具を使って行う手術です。従来の大きく切開する開腹手術に比べ、傷が小さく済むのが特徴です。
なぜ特別な技術が必要なの?
- 直接触れない難しさ: 開腹手術と違い、臓器を直接手で触ることができません。そのため、特殊な器具を使いこなす技術が必要です。
- モニター越しの作業: 術者は自分の手元ではなく、カメラの映像を見ながら手術を行います。これは普段の生活では経験しない感覚です。
- 限られた動き: 小さな穴から器具を入れるため、動きが制限されます。この制限の中で精密な作業を行う技術が求められます。
医師たちの努力:縫合・結紮術の練習
縫合(ほうごう)とは傷口を縫い合わせること、結紮(けっさつ)は糸を結んで固定することを指します。腹腔鏡手術ではこれらの作業も特殊な器具を使って行います。
練習方法
- ドライボックスでの練習:
- 腹腔鏡手術をシミュレートする箱(ドライボックス)を使用
- 医局の机の下に置いて、暇な時間に練習する医師も
- 針を持つ練習:
- 特殊な持針器で、正確に針を操作する練習
- 角度や力加減など、細かな技術が要求されます
- 両手の協調運動:
- 左右の手を協調して動かす練習
- まるでピアノを弾くような繊細さが必要です
若手医師の学びを支える一冊
私が若い頃に大変お世話になった教科書があります。「よくわかる内視鏡下縫合・結紮のコツと工夫」(著者:内田一徳、出版:永井書店)という本です。
この本の特徴:
- 初心者にも分かりやすい説明
- 経験豊富な医師の視点から書かれた実用的なアドバイス
- 起こりがちな失敗とその対処法も掲載
個人的な経験から言えば、この本は腹腔鏡手術の技術を磨く上で非常に役立ちました。特に、本の最後にある「ピットフォール(陥りやすい失敗)」の部分は、今読んでも「あぁ、こういう時に困るんだよな」と共感できる内容ばかりです。
現在では、腹腔鏡手術の技術書は増えていますが、当時はこのような専門的な内容に特化した本は珍しく、貴重な学習リソースでした。
医療の未来へ
腹腔鏡手術の技術向上は、より安全で効果的な医療の提供につながります。医師たちの日々の努力が、患者さんの笑顔と健康を支えているのです。
皆さんが病院で手術を受ける際、その裏で医師たちがどれほど技術を磨いているかを思い出していただければ幸いです。そして、医療を志す若い方々にとって、この記事が少しでもモチベーションになれば嬉しく思います。