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    鼠径部のしこりで考えられる病気と、押すと痛い場合・痛くない場合の見分け方を専門医が解説

    田村 卓也 田村 卓也
    鼠径部のしこり痛みと鼠径ヘルニア(脱腸)

    鼠径部にしこりがある。押すと痛いような気もするし、痛くない気もする。調べ始めると候補が多すぎて、どれが自分のことなのか分からなくなります。

    外来でこの部位のしこりを診るとき、私が最初に確かめることは決まっています。押すと痛いか。横になると消えるか。この2点で、候補はかなり絞れます。

    足の付け根のしこりができるくぼみのあたりが鼠径部で、鼠径ヘルニア(脱腸)が出てくる場所です。ここで扱う7つの病気のうち外来でいちばん多いのが鼠径ヘルニアで、その見分け方は、日本ヘルニア学会の診療ガイドラインが示す診察の手順と重なっています。

    • 押すと痛いしこり・痛くないしこりで、それぞれ考えられる病気
    • 横になると消えるかどうかで何が分かるか
    • 女性に特有のしこり(Nuck管水腫・大腿ヘルニア)と気をつけること
    • 診察室で実際に確かめていることと、超音波検査が必要になる場合
    • 鼠径ヘルニアだった場合の治療の選択肢(学会ガイドラインの考え方)
    • その日のうちに受診すべきサインと、受診する科
    執筆者
    田村 卓也

    日本外科学会 外科専門医

    田村 卓也

    鼠径ヘルニア脱腸日帰り手術大阪アルプスクリニック院長 | 川崎医科大学医学部卒業後、大阪赤十字病院などで臨床経験を積む。鼠径ヘルニア(脱腸)を中心とした腹腔鏡による日帰り手術に注力し、患者さまの身体的負担を軽減すべく2022年に当院を開院。

    監修者
    所 為然

    一般社団法人日帰り手術推進機構 代表理事

    所 為然

    一般社団法人日帰り手術推進機構 代表理事 | 広島大学医学部医学科卒業後、大阪赤十字病院などで臨床経験を積む。身体負担の少ない腹腔鏡下で行う鼠径ヘルニア根治術で、患者さまの早期の社会復帰を実現。鼠径ヘルニア日帰り手術広島アルプスクリニック院長。

    1. 鼠径部のしこりは「押すと痛いか」「横になると消えるか」で見分ける

    先に見るのは、痛みと、体位による変化。色や大きさは後回しです。

    「股関節のあたりにしこりがある」と言って来られる方もいます。太ももの付け根、股の付け根、股関節の前と呼び方が分かれるだけで、指しているのはたいてい同じ場所、鼠径部の溝の周りです。

    1-1. 押すと痛いかどうかで分かること

    右にあっても、左にあっても、最初に試すことは変わりません。指で軽く押してみて、はっきり痛みが出るなら、炎症か感染が起きている可能性が高くなります。候補に入るのはリンパ節の腫れ、化膿したできもの、炎症を起こした粉瘤あたり。

    痛みがない場合は、逆に候補が広がります。鼠径ヘルニアは初期に痛みがほとんど出ませんし、粉瘤や脂肪腫も炎症を起こしていなければ無症状のままで、痛くないから軽い、とは言えないのがこの部位のややこしいところ。痛くもなく硬いしこりが何週間も居座っているなら、むしろ慎重に調べる場面になります。逆に、しこりが無く痛みだけがあるときも、膨らみが出る前の鼠径ヘルニアを考えます。

    1-2. 横になると消えるかどうかで分かること

    ここが決め手になります。

    立っているときに膨らみが出て、横になると消える、または小さくなる。この変化があるしこりは、お腹の中から出てきたものが寝ることで重力の向きが変わって戻っているわけで、鼠径ヘルニアである可能性がかなり高くなります。

    一方、寝ても大きさが変わらないしこりは、皮膚やリンパ節など、その場所にとどまっている組織が原因と考えます。

    「立っているときしか出ないんですが、これは病気なんでしょうか」。外来でよく受ける質問です。その出方こそが手がかりで、消えるから軽い、ということではありません。

    実は、この「立つと出て、寝ると引っ込む」を確かめることが、診察室でやっていることそのものです。日本ヘルニア学会のガイドラインも、押せば戻る膨らみがあれば病歴と診察で鼠径ヘルニアの診断は容易で、画像検査を決まりごとのように行うことは勧めない、としています。

    確認すること鼠径ヘルニアらしい別の病気を考える
    押したとき中に戻る戻らない
    横になったとき消える・小さくなる変わらない(静脈瘤は例外)
    硬さやわらかい硬い・コリコリする
    痛み重だるい程度ズキズキする/まったくない

    参考:鼠径部ヘルニア診療ガイドライン2024(日本ヘルニア学会) CQ3-1

    2. 押すと痛いしこりで考えられる病気

    痛みで分かれる病気

    2-1. リンパ節の腫れ

    脚から上がってきたリンパ液が集まる中継地点が、この場所です。足に傷がある、水虫が悪化した、性感染症にかかった。そういうときに、上流にあたるここのリンパ節がふくれます。

    押すと痛いタイプなら、原因として絞られてくるのは足の傷、水虫、性感染症。大きさが1cmを超えるものは経過観察の対象になります。

    痛くないのに硬いしこりが残っている場合は別の話で、6章に分けて書きます。

    2-2. 化膿したできもの(皮下膿瘍)

    毛穴の感染などをきっかけに、皮膚のすぐ下に膿がたまった状態です。最初は硬いしこりとして触れ、進むとブヨブヨした感触に変わります。

    赤み、熱をもった感じ、ズキズキする強い痛み。この3つがそろえば、見た目でおおよそ判断がつきます。感染が広がっているサインなので、38℃以上の発熱を伴うときは、その日のうちに受診してください。

    抗菌薬の内服だけでは収まらず、切開して膿を出す処置になることも珍しくありません。

    2-3. 嵌頓した鼠径ヘルニア

    押しても戻らない。痛みが強くなってきた。普段は押せば戻っていた膨らみがそうなったら、嵌頓(かんとん)といって緊急の状態です。詳しくは7章に書きます。

    3. 痛くないしこりで考えられる病気

    鼠径ヘルニアの図

    3-1. 鼠径ヘルニア(脱腸)

    鼠径ヘルニアの図

    この部位のしこりで、外来でいちばん多く出会うのがこれです。お腹の中にあるはずの腸や脂肪が、弱くなった筋膜のすきまから皮膚の下に出てきた状態を指します。

    気づくきっかけとして多いのはお風呂で、湯船に入るときの姿勢でぷくっとした膨らみが目に入ります。次に多いのが、重い物を持ち上げた瞬間、咳き込んだとき、立ちっぱなしだった日の夕方。

    触るとやわらかく押せば中に戻り、痛みは重だるい程度のことが多いので、症状が軽いぶん先延ばしになりがちです。自然に治ることはありません。日本ヘルニア学会のガイドラインも、成人の鼠径ヘルニアは自然治癒しないため根治には手術が必要である、と明記しています。

    誰に起きやすいかも、ある程度分かってきています。ガイドラインが危険因子として挙げているのは、男性であること、年齢が高いこと、鼠径ヘルニアの家族歴、前立腺の手術を受けたこと、長く続く咳、肉体労働の量など。体格については、太っている人より痩せている人のほうが起きやすいという報告が多い、という少し意外な記載もあります。

    鼠径部の膨らみや痛み、鼠径ヘルニアの症状について(3分16秒)

    参考:鼠径部ヘルニア診療ガイドライン2024(日本ヘルニア学会) CQ1-1・CQ5-1

    3-2. 粉瘤

    皮膚の下に袋のような構造ができて、中に古い角質や皮脂がたまった良性のできものです。

    ゴムのような弾力があり、しこりの中央に毛穴のような黒い点(開口部)が見えることがあります。普段は何も症状がないのに、きっかけがあると急に赤く腫れてズキズキ痛みだす。この状態を炎症性粉瘤と呼びます。

    自然に消える病気ではないので、繰り返し腫れるようなら袋ごと取る手術を考えます。

    3-3. 脂肪腫

    脂肪の細胞がかたまりになったもので、こちらも良性で、年単位でゆっくり大きくなります。押すとぷよっとしていて、痛みは普通ありません。

    多くは様子を見ていて構いません。ただ、5cmを超える場合や短期間で急に大きくなった場合は話が変わり、脂肪由来の悪性のもの(脂肪肉腫)と区別するために画像の検査をお勧めしています。

    3-4. 血管のふくらみ(動脈瘤・静脈瘤)

    やや特殊ですが、血管そのものがしこりに見えることがあります。

    動脈瘤は、指を当てると心拍と同じリズムでドクドクと脈を打つのが決め手です。痛みがないため軽く見られがちですが、放置すると破裂の危険があります。

    静脈瘤は弾力のあるふくらみで、青紫に透けて見えることも。立っていると目立ち、横になると軽くなるので鼠径ヘルニアと似た動き方をしますが、拍動はなく、だるさや重さを感じやすい点が違います。

    関連記事:足の付け根のしこりは自然に治る?痛くないときの見極めと受診の目安

    4. 女性の鼠径部のしこりで気をつけること

    女性の場合、候補が2つ加わります。

    4-1. Nuck管水腫

    胎児のときに鼠径管へ入り込んだ腹膜の一部が生まれた後も残り、そこに水がたまったものです。20代から40代の女性に多く見られます。

    やわらかく弾力があり、出る場所が鼠径ヘルニアとほぼ同じなので、見間違えられやすいものです。決定的に違うのは体位を変えても大きさがあまり変わらない点で、痛みを伴うこともあります。

    4-2. 大腿ヘルニア(女性は「様子見」に注意)

    太ももの付け根寄り、鼠径部のすぐ下に膨らみが出るのが大腿ヘルニアです。高齢で痩せ型、出産回数の多い女性に多い、と教科書的には言われてきました。ガイドラインはこの説を裏づける明確なエビデンスは無いとしていますが、女性に多い病気であることに変わりはありません。

    気をつけたいのは、鼠径ヘルニアより嵌頓に進みやすいこと。嵌頓しやすいからこそ、これまでのガイドラインでは症状が無くても手術が勧められてきました。女性で「もう少し様子を見よう」と思っている方ほど、一度は診察を受けてほしい理由がここにあります。

    4-3. 子宮内膜症が関係することもある

    まれに、子宮内膜症と一緒に見つかることがあります。生理の周期に合わせて痛みや腫れ方が変わるようなら、その情報を診察のときに伝えてください。しこりが無いまま女性の足の付け根の痛みが続く場合も、子宮内膜症は候補のひとつです。

    田村卓也 院長

    専門医のワンポイント

    女性の方から「自分は関係ないと思っていました」と言われることが、今もときどきあります。男性のほうが頻度は高いものの、女性に起きないわけではありません。Nuck管水腫や大腿ヘルニアも含めて調べれば、原因はたいてい見えてきます。一人で判断せず、一度診せてください。

    参考:鼠径部ヘルニア診療ガイドライン2024(日本ヘルニア学会) CQ2-1・CQ6-1

    5. 診察室では何を確かめているか

    「病院で何をされるのか」という不安も、よく聞きます。鼠径部のしこりの診察は、大がかりなものではありません。

    最初は問診で、いつから、どんなときに出るか、痛みはあるか、押すと戻るかを聞きます。左右のどちらか、それとも両側かも見ます。片側だけ症状が強く、もう一方はほとんど症状の出ない両側のヘルニアもあるためです。次に立った状態と寝た状態の両方で膨らみを見て、お腹に力を入れてもらう。押せば戻る膨らみがここで確認できれば、診断はほぼつきます。ガイドラインでも、還納できる膨らみがあれば病歴と身体所見で診断は容易とされ、画像検査を決まりごとのように行うことは推奨されていません。

    超音波検査を使うのは、膨らみがはっきりしないときです。肥満で分かりにくい、痛みや違和感だけで膨らみが見えない、診察のときには出ていないのに夜になると出る、押しても戻らない。こうした場合、ガイドラインは立った状態や息んだ状態で行う超音波検査を第一選択としています。CTやMRIは、ほかの病気との見分けが必要なときに個別に検討する位置づけです。

    診察の進め方は当院でも同じで、立った状態と寝た状態の確認から始め、超音波は必要な方に限って行っています。

    参考:鼠径部ヘルニア診療ガイドライン2024(日本ヘルニア学会) CQ3-1・CQ7-3

    6. 悪性の可能性を心配している方へ

    悪いものではないか。外来でも、この部位のしこりでいちばん多く聞かれる不安がこれです。

    目安として気に留めていただきたいのは、痛くない・硬い・だんだん大きくなるという組み合わせです。この3つがそろうしこりは、リンパ節の腫れであっても原因を調べる段階に入り、悪性リンパ腫やほかの部位からの転移を念頭に置いて、エコーや採血で確認していくことになります。

    ただし、この3つがそろっているからといって悪いものと決まるわけではなく、粉瘤や脂肪腫も痛くないまま大きくなります。心配な要素があるなら、放置せずに調べるのが早いです。

    7. その日のうちに受診すべきサイン

    次のどれかに当てはまるようなら、できればその日のうちに受診してください。夜間や休日なら救急外来も選択肢になります。

    • 普段は押すと戻る膨らみが、押しても戻らない
    • 膨らみが徐々に硬くなってきた
    • 激しい腹痛がある
    • 嘔吐や、お腹の張りを伴う
    • しこりの部分に赤みや熱をもった感じがある
    • 38℃以上の発熱がある

    嵌頓は、出てきた腸が筋膜のすきまで締めつけられ、戻らなくなった状態です。締めつけが続くと血流が止まっておよそ8時間で腸が壊死し始めるとされ、そこから腸に穴があき、腹膜炎、敗血症へと進みます。

    嵌頓の進み方

    ガイドラインでも、嵌頓・絞扼した鼠径部ヘルニアは腸閉塞や腸管壊死を伴うことがあるとして、緊急手術の対象に位置づけられています。いつ起きるか予測できないのが嵌頓のやっかいなところで、予防する方法は実質ありません。だから症状に気づいた段階で治療を検討する、という考え方になります。

    関連記事:鼠径ヘルニアを放置すると危険?嵌頓のリスクと治療法を専門医が解説

    参考:鼠径部ヘルニア診療ガイドライン2024(日本ヘルニア学会) CQ19-1

    8. 鼠径部のしこりは何科を受診するか

    迷ったら外科、または消化器外科です。

    いちばん頻度の高い鼠径ヘルニアであれば、その場で診断から治療の相談まで進められますし、そうでなかった場合にも適切な科へ渡せるので、入口としては無駄が少ないほうだと思っています。

    疑われる病気第一に受診する科ほかの選択肢
    鼠径ヘルニア外科・消化器外科ヘルニア専門クリニック
    リンパ節の腫れ内科血液内科・感染症内科
    粉瘤皮膚科形成外科
    脂肪腫形成外科外科・皮膚科
    動脈瘤・静脈瘤血管外科心臓血管外科
    化膿したできもの皮膚科外科
    Nuck管水腫婦人科外科
    大腿ヘルニア外科・消化器外科—
    判断がつかない外科かかりつけ医
    受診先の決め方

    かかりつけの内科がある方は、そちらで相談して紹介状を書いてもらう流れでも問題ありません。

    関連記事:鼠径ヘルニア(脱腸)は何科を受診する?男性・女性別の行き先を専門医が解説

    関連記事:Vラインのしこり・膨らみが鼠径ヘルニアのこともある理由と、皮膚の病気との見分け方

    9. 鼠径ヘルニアだった場合、治療はどう決めるか

    診断が鼠径ヘルニアだったとき、次に聞かれるのは「すぐ手術ですか」です。答えは、症状しだい。

    症状がない、あってもごく軽い場合について、ガイドラインは「十分な説明のうえでの手術および経過観察の双方が許容される」としています。ただし同じガイドラインには、経過観察を選んだ人の3割以上が数年のうちに結局手術を受けている、というデータも載っています。待つなら、7章のサインを知ったうえで待つ、ということになります。

    手術の方法は大きく2つ。鼠径部を切開してメッシュを当てる方法と、腹腔鏡を使う方法です。ガイドラインはどちらも条件付きで推奨していて、腹腔鏡については「十分習熟した外科医が実施する場合」に推奨するとしています。腹腔鏡は術後の痛みや傷の感染が少なく職場復帰が早い一方で、手術時間は長く、血管の損傷や精巣の痛みが起きる率は高い、と両面が記載されています。

    当院は腹腔鏡による日帰り手術を行っています。ガイドラインには、鼠径ヘルニア手術の多くが日帰りで実施されていることが知られている、という記載があります。どの方法が合うかは、診察のうえでご相談ください。

    参考:鼠径部ヘルニア診療ガイドライン2024(日本ヘルニア学会) CQ5-1・CQ7-1・CQ11-1

    10. まとめ

    原因が1つに決まっていないのが、この部位のしこりの厄介なところです。それでも、見分けるときの入口はそんなに複雑ではないと考えています。

    • 押すと痛いなら、炎症や感染を先に考える
    • 横になると消えるなら、鼠径ヘルニアの可能性が高い
    • 痛くない・硬い・大きくなる、がそろうなら調べたほうがいい
    • 押しても戻らない膨らみと強い腹痛は、その日のうちに受診
    • 鼠径ヘルニアは自然には治らない。無症状なら経過観察も選べるが、待つならサインを知って待つ

    診断だけでも構いません。当院では腹腔鏡を使った日帰り手術を行っていますので、気になる膨らみがあればご相談ください。

    サンテレビの情報番組「あんてなサン」が、当院の日帰り手術の現場を取材した映像です。手術当日にどう過ごすかの雰囲気が伝わると思います。

    サンテレビ「あんてなサン」鼠径ヘルニアの日帰り手術の現場に密着(28分30秒)

    診察と手術を担当する医師のことと、初めて受診されるときの流れや持ち物は、別のページにまとめています。

    よくある質問

    足の付け根のしこりで、いちばん多い原因は何ですか。

    外来で最も多いのは鼠径ヘルニア(脱腸)です。次にリンパ節の腫れ、粉瘤、脂肪腫といったところ。立つと膨らみが出て、横になると消えるしこりは、鼠径ヘルニアの典型的な出方です。

    右の足の付け根だけにしこりがあります。片側だけでも問題ありますか。

    片方だけに出ることは珍しくありません。鼠径ヘルニアは片側に出ることが多く、両側に出る方もいます。リンパ節の腫れも、原因になった傷や感染がある側にだけ出ることがよくあります。左右のどちらであっても、片側でも両側でも、確かめることは同じです。押すと痛むか、横になると消えるか。片側だから軽い、という関係はありません。

    痛くないしこりなら、放っておいても大丈夫ですか。

    痛みがないから安全、とは言えません。鼠径ヘルニアは初期に痛みが乏しいことが多く、放置すると嵌頓を起こす場合があります。痛くもなく硬いしこりが長く残っているときは、別の病気の可能性も出てきます。一度診てもらうほうが安全です。

    何科に行けばよいですか。

    迷う場合は外科または消化器外科をお勧めします。頻度の高い鼠径ヘルニアならその場で診断がつきますし、そうでなければ必要な科へ引き継げます。かかりつけの内科から紹介状をもらう流れでも構いません。

    病院ではどんな検査をしますか。

    問診のあと、立った状態と寝た状態で膨らみを確認し、お腹に力を入れてもらいます。押せば戻る膨らみがあれば、日本ヘルニア学会のガイドラインでも画像検査なしで診断してよいとされています。膨らみがはっきりしない場合は、立った状態や息んだ状態での超音波検査を行います。

    緊急で受診すべきなのはどんなときですか。

    押しても戻らない膨らみ、激しい腹痛、嘔吐、しこり部分の赤みや熱感。このいずれかがあれば緊急受診の対象です。嵌頓の可能性があり、放置すると腸の壊死や腹膜炎に進むことがあります。

    鼠径ヘルニアと診断されたら、すぐ手術が必要ですか。

    症状がない、またはごく軽い場合は、十分な説明を受けたうえで経過観察を選ぶことも認められています。ただし経過観察を選んだ人の3割以上が数年のうちに手術を受けているという報告があり、待つ場合も嵌頓のサインを知っておく必要があります。

    鼠径ヘルニアは自然に治りますか。

    治りません。筋膜にできたすきまがひとりでに塞がることはなく、根本的に治すには手術という選択肢になります。日本ヘルニア学会のガイドラインも、成人の鼠径ヘルニアは自然治癒しないと明記しています。