胆石症

  1. ホーム
  2. 診療案内
  3. 胆石症

胆嚢は胆汁という消化液をためて濃縮するための袋で、肝臓の下についています。胆汁は肝臓で1日600-800ml程度作られ、胆管という管を通じて最終的には十二指腸に排出され脂肪分やビタミンの消化・吸収を助けます。肝臓の外で1本にまとまった胆管を総肝管といいます。総肝管は胆嚢管と総肝管に枝分かれしています。胆嚢管に流れ込んだ胆汁は胆嚢で濃縮され、食事が入ってきたタイミングで胆嚢から排出され、より効率よく脂肪やビタミンの消化吸収を促します。

この胆汁に含まれる成分が結晶となって固まったものを胆石と呼びます。胆嚢内で結晶になることが一番多く、胆石全体の約80%といわれています。胆嚢に出来た胆石を「胆嚢結石」と言います。

その他の場所にも胆石はできます。総胆管内に出来れば総胆管結石、肝臓の中の細い胆管に出来れば肝内胆管結石と言います。

原因

胆石はコレステロール石と色素石の2種類があります。コレステロール石は、胆汁のコレステロール濃度が高いときに結晶化するため、血中コレステロール値の高い人、美食家の方などは胆石ができやすい傾向があるといえます。色素石のビリルビンカルシウム石は細菌感染が原因と言われています。黒色石と呼ばれる石の原因はよくわかっていません。また血縁者に胆石症の方がいる場合も、胆石症になりやすいと言われています。

疫学

日本人の胆石保有率は食生活の欧米化や高齢化の影響で増加傾向にあり、現在成人の10人に1人は胆石を持っているともいわれています。

胆石があっても2-3割の方はほとんど症状がありません。しかし半分以上の人は右脇腹やみぞおちに痛みがある、右肩が痛くなるなどの症状が出ます。これらの症状は胆嚢が収縮する食後に多いともいわれています。この病態を胆石発作と言います。症状は一時的なことも多いため、放置されている方も多いと思います。

胆石は胆汁の通り道に詰まることがあります。胆嚢頸部や胆嚢管に胆石が詰まり、細菌感染が加わると急性胆嚢炎という病態になることがあります。右脇腹の痛みが持続的になり、発熱を起こすこともあります。急性胆嚢炎となった場合は緊急手術が必要なことも多いため、早めに総合病院を受診しましょう。

また胆管に胆石が詰まり、細菌が感染した場合は急性胆管炎という状態になることがあります。急性胆管炎では細菌が血液中に逆流し、全身に細菌が回る敗血症という危険な状態に発展することもあります。胆管に胆石がつまると白目の部分が黄色くなる(黄疸)などの症状が出るため、早めに気づくことができる場合もあります。もし黄疸を疑ったら総合病院を受診することを強く推奨します。

このように症状がない方でも突然、救急搬送が必要となることもあります。また、すでに腹痛などの症状がある方は早めの治療をおすすめします。

身体所見や腹部症状の経過から胆石症を疑った場合は血液検査と、画像の検査を行います。血液検査ではビリルビンの値で黄疸の有無を白血球数やCRP(C-reactive protein)などの値から炎症の有無を判定します。手術を見越して採血する場合は術前検査として必要な項目も調べておきます。画像検査は以下の2つです。

超音波検査

超音波に対する臓器毎の特性(反射のしやすさの違い)を画像として描出する検査です。腹部診察の延長で行うことができ、簡便な検査です。圧痛などの理学所見も同時に取得でき動画として再生される点は後述の画像検査にはないメリットと言えます。一方で全く同じ画像を再現できない(再現性がない)深部にあるほど描出能が落ちるということはデメリットと言えます。胆石症においては 胆嚢結石を見つけることには長けていますが、胆管結石を直接観察出来ないこともあります

MRCP(Magnetic Resonance Cholangio Pancreatography)-MRI検査

MRI装置を用いて、胆道内の胆汁を映し出す検査です。胆管の走行は一人一人異なるため、当院では合併症予防策の一巻としてMRCPで、術前に胆管の走行を把握しております。造影CTとは異なり造影剤の注射は必要ないため、体への負担は少ないといえます。

これらの検査を組み合わせて診断をつけます。

胆管のバリエーション

胆石を放置すると…

胆石が原因で胆のう内に炎症や細菌感染を起こし 急性胆のう炎や胆管炎となり、腹痛、発熱、黄疸を併発します。重症化すると腹膜炎や急性閉塞性化膿性胆管炎になり、さらに敗血症で血圧低下や意識障害が起こると、緊急の救命処置を行っても手遅れになる事があります。

胆石症の治療方法は

  1. 外科手術:胆嚢ごと、胆石を摘出してしまいます。
  2. 胆汁酸溶解療法:コレステロール結石であれば、胆汁酸製剤(ウルソデオキシコール酸)による溶解効果が認められており、1年間の内服継続で24-38%程度に溶解が成功します。しかし、一旦コレステロール結石の溶解に成功しても、内服を中断すると60%の患者さんで胆石が再発します。
  3. 体外衝撃波粉砕療法(ESWL) : 体外より衝撃波を石に当てることにより結石を粉砕し、結石を除去する方法です。しかし、すぐに再発することや、結石が落下するときに膵炎や胆管炎や胆道閉塞などの重篤な合併症を起こすこともあり、現在はほとんど行われておりません。

有症状の胆石は基本的には外科手術の適応になります。それに対して、無症状胆石は経過観察が推奨されております。その理由として、痛みなどが出る有症状化率は年に1~2%で、日本人の胆石保有者の8割は、無症状のままといわれています。

ただ、無症状胆嚢結石でも予防的に胆嚢摘出が推奨される場合があります。それは、胆嚢癌の合併が完全に否定できない場合と、胆嚢癌発生高危険群とされている病態を合併している場合です。前者は、胆嚢内に結石が充満したり、胆嚢の萎縮や変形が著明だったりして、胆嚢内部が超音波検査でも分からないといった場合です。後者は、胆嚢癌発生のリスクが高いといわれている、胆嚢の壁が石灰化していたり、先天的な胆管形態異常を合併していたりする場合などです。

また、高齢化が進むにつれ、高齢者の胆嚢炎が増加傾向にあるとの報告があります。若い時は無症候性胆石だったが、加齢伴う生活習慣の変化により急性胆嚢炎を発症するのではないかと言われております。なので、若くて体力がある時に胆嚢摘出術を受けるのも選択肢の一つだと私たちは考えます。

手術には、開腹手術と腹腔鏡手術がありますが、現在は腹腔鏡手術(腹腔鏡下胆嚢摘出術)が主流となっています。当院では図の通り臍に1.5cm、上腹部に0.5cm ×2か所の創で行っており、一般的な病院よりも小さな創で行っています。臍部の創よりカメラ(腹腔鏡)助手の鉗子を入れ、お腹の中に炭酸ガスを入れて腹腔内を膨らませ臓器を見易くし、小さく細い機械を使って手術操作を行い胆嚢を体外に取り出す手術です。

手術の内容としては、胆嚢管と胆嚢動脈を確認し、クリップをかけて切離し、胆嚢を肝臓から剥がして臍の穴から摘出します。摘出後、穴を縫い閉じて、手術は終了です。

全身麻酔下で行い、手術は約45分程度です(胆嚢の状況によっては1.5時間となる事もあります)。術中・術後に起こりうる合併症には出血・胆管損傷・胆汁漏等がありますが、これらの合併症が起こる事は稀です。

診療全体の流れについて簡単にご説明します。

予約

Web予約・電話予約・
LINE相談

前日までの予約はWebが便利です。当日は17時まで電話予約受付ます。LINE無料相談はいつでもお気軽にどうぞ。

初診

診察・検査・MRCP撮像

初診では疾患の診断をし、日帰り手術を受けれるか検査を行います。
患者様のご都合に合わせた日程で手術を組みます。

再診

手術日決定

手術前日は診療計画表で最終食事時間、内服薬、手術日の持ち物を確認しましょう。

手術当日

最終飲料時間・手術・
術後回復・安着確認

手術当日は飲水も指示しました時間までとし、手術に備えます。
全身麻酔の手術なので、目が覚めたら手術が終わっている状態です。術後はご自分で帰宅できるまで休んでいただき、ご自宅に到着したら私たちからお電話で安着確認をさせていただきます。

術後確認

術後1/3/7に電話診察します

疼痛

術直後は創の痛みがありますが、これらは鎮痛薬や局所麻酔薬を用いてコントロールします。何もしなくても痛いという
状態は通常2日程度です。お腹に力を入れると痛いという状態は1週間程度でほとんど気にならなくなることが多いです。

出血

術後出血は通常術後2日以内に問題となります。多くは術直後から異常が出ます。腹壁の創に少し血がにじむ程度であれば自然止血されることが多いです。

感染

体表の創の感染と腹腔内の感染があります。そもそも起こさないことが一番ですので、術後は予防的に抗菌薬を内服いただいています。また創部の保護剤は術後3日以降早めのタイミングで剥離いただき、創部をシャワーで洗浄頂くようお願いしています。皮膚を清潔に保つことで創治癒にも良いと考えます。

腸閉塞

何らかの原因で腸内の流れが滞った状態です。腸管が動かないために流れが滞る場合と、腸管内が何らかの原因で詰まってしまう場合があります。お腹が張る、便が出ない、食べたものを吐いてしまうという場合には腸閉塞が疑われます。一度食事を止めて待つことで改善が得られることがありますが、腸管が詰まってしまっている場合は改善しないこともあり、また緊急で対処が必要なことも希ですがあります。

胆汁漏

胆汁は肝臓で生産され、毛細胆管を流れて最終的には総胆管へと注ぎ一つの流れに集約されます。胆嚢が張り付いている肝下面にも極々細い胆管が走っていることがあり、このような部分から胆汁が漏れ出すことがあります。多くは細菌の感染を伴って膿のたまりができて熱が出ます。また胆汁は刺激性があるため痛みが出ます。抗菌薬による治療や膿を吸いだす治療が必要になります。

胆管損傷(他臓器損傷)

胆管の解剖は一人ひとり異なります。このため当院では術前にMRCPにより胆管の走行を把握しております。胆嚢のすぐ近くを総胆管や総肝管が走行している場合もあり、損傷するリスクがあります。損傷した場合は修復を行います。修復に伴い狭窄(狭くなる)を起こしたり、修復したにもかかわらず胆汁が漏れ出したりすることもあります。

落下結石(総胆管結石)

術前検査では総胆管や総肝管に胆石がないことを確認します。胆管に胆石がある場合は術前にERCPなどの手技で取り除いてから、手術を行います。しかし胆嚢内にある結石が術中に胆管側に落ちるということは稀ながらあります。術後に高熱が続く、黄疸が出るなどの場合は落下した結石による総胆管結石が疑われますので、ERCP等の処置が必要になることがあります。

当院における胆石症診療の概算になります。
保険診療が適応されますので、非常に高額になったり、施設間で⼤きな差が出る事はありません。

表1
スワイプしてください
  70才以上の方 70才未満の方
保険負担割合 1割負担 2割負担 3割 3割
診察のみ 約1,000円 約1,700円 約2,500円 約2,500円
術前検査 約4,000円 約8,000円 約12,000円 約12,000円
手術費用 約18,000円 約18,000円 ※1 約118,000円 ※2 約118,000円 ※2
  • ※1 自己負担は18,000円が上限となります。
  • ※2 高額療養費制度により負担が軽くなる事があります。

胆石は放置するとどうなるか

胆石を放置してもすべての人が手術が必要になるとは限りません。ただし胆石がある方のうち半分程度の方は症状を持つといわれており、症状が出る方の方が多いと言えます。症状がある場合は手術することにより不快な症状を取り除けます。また急性胆嚢炎になる可能性もあり、その場合は緊急手術となり入院が必要になります。当院での日帰り手術をご希望の場合は早めの治療をお勧めしています。

胆石症の手術費用は?

手術費用は「手術費用」をご覧ください。

胆石が出来る原因は何ですか?

胆石は種類にもよりますが、食習慣が原因のものが増加傾向にあります。予防を考えるのであれば、油物は控える方が良いと言えます。これによりコレステロール結石をある程度抑制できる可能性があります。そのほか遺伝的な要因があげられます。いずれにしても胆石が既にある場合には症状が出る可能性が高いと言えます。