1. ホーム
  2. 医師紹介・院長ブログ
  3. 論文紹介:女性の鼠径ヘルニア
所 為然外科部長

論文紹介:女性の鼠径ヘルニア

皆様こんちには、大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニックです。

本日ご紹介する論文は、男女での鼠径ヘルニアの違いについてです。

タイトル「Sex-based differences in inguinal hernia factors」

PMID:37626235(Google scholarでも見つけれます)

 

【背景】
・鼠径ヘルニアに関する知識の多くは男性に基づいている。
・一方、女性は鼠径ヘルニア修復後の予後が悪く、慢性疼痛や再発が多いことが知られている。
・小児科の文献によると、女性の鼠径ヘルニアは男性よりも両側性、陥凹性、遺伝的素因が強いことが示されている。
・我々は成人における鼠径ヘルニア要因の性差を評価し、成人における文献の少なさを補うことを目的とした。

 

【方法】
・デザイン:前向き観察研究
・男性と女性のヘルニア患者の違いについて比較
・アウトカム:患者背景の違い、リスク因子の数、鼠径ヘルニアの状態
・多変量解析を行い、術中に発見されたヘルニア欠損の数が多いことに関連する独立変数を探索

 

【結果】
・494例中202例(40.9%)が女性であった

・鼠径ヘルニアのリスク因子は女性で有意に多かった(1.53 vs 1.2, p = 0.003)

・女性は男性に比べ、便秘、GERD、喘息が有意に多く、BMIが低かった

・ヘルニアの家族歴は男女とも同様であった

・予想されたように、女性は男性より内鼠径ヘルニアが有意に少なく(12.9%対32.9%、p<0.001)、大腿ヘルニアが多かった(38.5%対12.2%、p<0.001)

・両側ヘルニアの割合は同様であった・鼠径ヘルニア修復術を受けた女性の平均既往分娩数は1.23であった

・回帰分析によると、年齢、性別、BMI、分娩回数はヘルニア門の数と相関していなかった

 

【結論】
鼠径ヘルニア一次修復術を受ける女性は、男性よりも鼠径ヘルニアの術前危険因子が多かった

今回の研究では、男性と女性で両側ヘルニアの発生割合に差は認められなかった

年齢、性別、BMIおよび分娩回数は、発見されたヘルニア門の数とは相関しなかった

本研究は、女性の鼠径ヘルニアに対する認識を促し、鼠径ヘルニアに対する性差と素因を定量化するための新しいデータを提示するものである

 

[COMMENT]
鼠径ヘルニアの生涯罹患率は男性は100人に約30人、女性は100人に約4人が鼠径ヘルニアと言われています。
今回の研究では、女性のヘルニア患者の方がリスク因子を多く持っている事が分かりました。つまり、同等のリスク因子をもつ男性と女性を比較すると、女性は私たちが思う以上に鼠径ヘルニアになりにくいという事です。

ただし、女性は大腿ヘルニアが多く、大腿ヘルニアは嵌頓しやすいです。

鼠径部が膨らんでいる、と少しでも感じた方は早めの受診をお勧めいたします。

著者

外科部長
所 為然Yukinari Tokoro

略歴

2010年3月 広島大学医学部医学科卒業
2010年4月 成田赤十字病院
2012年4月 千葉大学医学部付属病院肝胆膵外科
2014年4月 千葉県がんセンター消化器外科
2017年4月 大阪赤十字病院消化器外科
2022年12月 MIDSクリニック開院
2024年2月 外科部長就任

資格

外科学会専門医/消化器外科学会専門医/消化器がん外科治療認定医/緩和ケア講習会修了

所属

日本外科学会/日本消化器外科学会/日本臨床外科学会/日本医癌学会/日本内視鏡外科学会/日本食道学会/日本ヘルニア学会/日本臨床栄養代謝学会

一覧へ戻る