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鼠径ヘルニア
田村 卓也院長
メッシュ固定について
メッシュ固定についてです。私たちはself grip mesh(張り付いて固定されるタイプのメッシュ)
および形状付加型のメッシュを縫合固定してヘルニア修復を行っております。
本日はそんなメッシュ固定に関するお話です。
Changing the innate consensus about mesh fixation in trans-abdominal preperitoneal laparoscopic inguinal hernioplasty in adults: Short and long term outcome. Randomized controlled clinical trial
メッシュ固定の有用性を検証するということが一番の命題になっています。私たちも用いているTAPP(経腹的腹膜前修復)法を受けた798人の方を対象とした単施設の介入研究です。
固定なし、Tacker(腹壁に固定するための鋲)を用いた固定、組織接着剤(我が国では使用不可)を用いた固定の3群に分けて術後の再発率、疼痛等を18か月追跡しています。
結果再発率には群間差がなく、術後の慢性疼痛は固定なし(1.9%)と組織接着剤群(7.1%)に比べてTacker群で多く(19.9%)、結果1日以上の入院を要した割合もTacker群で高かったとのことです。仕事への復帰もこの研究では1週間以上を要した方の割合がTacker群で最も高く、50%を超えていました。
再発率に関しては症例数が少ないためイベント数の不足で差が生まれなかった可能性はありますが、疼痛に関してはTackerを用いた手術ではより強い可能性があるといえます。
私たちは原則Tackerを用いません。術後疼痛は日帰り手術の妨げになるのは間違いないと考えるからです。ただしメッシュ固定を行わなくてよいと結論付けるのは時期尚早であると考えます。
最小限の固定となるよう縫合糸による固定、あるいはsefl grip meshを用いることでできるだけ痛くない手術を目指します。