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論文紹介:メキシコにおける腹腔鏡手術の現状
皆様こんにちわ、大阪駅前にある鼠径ヘルニア日帰り手術のMIDSクリニックです。
本日はメキシコにおける腹腔鏡下手術についての文献をご紹介いたします。
タイトルは「Availability of laparoscopic surgery in Mexico's public health system: a nationwide retrospective analysis」
2023年にLancet Reg Health Amで発表された論文です。
(PMID:37521438)
【背景】
医療リソースが乏しい環境では、腹腔鏡手術は依然として普及していない。
メキシコにおける腹腔鏡手術の使用状況を調査し、関連因子を明らかにすることを目的とした。
【方法】
オープンソースのデータベースから、2021年にメキシコの公立病院で行われた3つの一般的な外科手術(胆嚢摘出術、盲腸切除術、鼠径ヘルニア修復術)について全国規模にレトロスペクティブに収集し、分析した。
手技はICD-9コードに基づいて腹腔鏡手術に分類した。
病院および外来で実施された手技から、患者データ(保険加入状況など)、臨床データ(麻酔手技など)、地理的データ(地域など)を抽出した。
ランダムフォレストモデリングによる多変量解析を行い、腹腔鏡アプローチを採用する際の関連因子とその重要性を特定した。
【結果】
676の公立病院における97,234件の手術が対象となった。
16,061例(16.5%)が腹腔鏡アプローチで施行されており、すべての領域(消化器、呼吸器、泌尿器など)で腹腔鏡手術は少なかった。
人口10万人あたりの腹腔鏡手術の割合は、北西部で最も高く(22.2%、16/72)、南東部で最も低かった(8.3%、13/155)。
腹腔鏡下手術が選択される要因としては、女性、自治体住民数、地域、麻酔方法、手技の種類であった。
多変量モデルへの寄与は市町村住民数が最も高かった。
【解釈】
腹腔鏡下手術は、人口の多い都市部、裕福な北部地域でより一般的に行われていた。
腹腔鏡下手術を選択される理由としては、変更できない患者さんの背景因子(性別や年齢など)よりもむしろ、手術が行われる環境の条件に強く影響されていた。
これらの知見は、メキシコにおいてすべての国民が低侵襲手術へ平等にアクセスできるためには、持続的かつ個別化された介入が必要であると思われた。
[COMMENT]
腹腔鏡手術が本当に良いものかどうか、は多くの議論があり、各国でランダム化比較試験が行われております。
傷が小さく術後の回復が早いため、やはり殆どの試験では仮説通り腹腔鏡手術の有用性が示されています。
では、患者さんが望めば必ず腹腔鏡手術を受ける事が可能でしょうか。
実は医療資源が豊富で腹腔鏡手術が普及している日本においても、そうとは言えません。
いくつか理由があります。
一つは技術的な問題で、腹腔鏡手術は習得するまでに要する時間が長いという事です。
医療を提供する側の要因であり、つまりすべての医師が等しく腹腔鏡手術を行えるとは限らない事に起因します。
この問題は腹腔鏡下手術の初期だけでなく、各領域での手術手技が確立した現在でも存在します。
ただ、今後はロボット補助がどんどん増える事でラーニングカーブが短くなると予想されます。
二つめは医療リソースの問題です。
先に「日本は医療リソースが豊富」と申し上げたので矛盾するように感じますが、人的資源は実は十分とは言えません。
腹腔鏡手術は全身麻酔が必須であるため、麻酔科医の協力が不可欠です。
また、通常の開腹手術と比較して外科医の人数も多く必要となります。
例えば総合病院で腹腔鏡の鼠径ヘルニア根治術を受けようとする場合、2-3ヶ月待ちといわれる事も稀ではありません。
必要とする患者さんのすべてに腹腔鏡手術を提供できない理由は他にも-ありますが、おおまかには上記二つとなります。
当院では、クリニックの特性を利用し、患者様のニーズに最大限応えれるよう努めております。
鼠径ヘルニアで病院をお探しの方、ぜひ一度ご相談ください。