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~腹腔鏡手術のメリット~de novo型外鼠径ヘルニアに絡めて
すこしマニアックなお話です。
鼠径ヘルニアは外鼠径ヘルニアと内鼠径ヘルニアの2つのタイプがあります。
鼠径ヘルニア全体で、おおよそ60%以上は外鼠径ヘルニアであり最も多いタイプになります。
外鼠径ヘルニアは内鼠径輪がヘルニア門(内臓が飛び出す出口)となっており、これは腹膜症状突起が開いたまま残る(開存する)ことが原因で起こるといわれています。
ただこの腹膜症状突起が開存していないにもかかわらず、内鼠径輪の周囲の組織が弱くなり飛び出すタイプの外鼠径ヘルニアがあるといわれています。
このような外鼠径ヘルニアのことをde novo型と呼ぶことが提唱されています。
腹膜症状突起が開存して発生する従来の外鼠径ヘルニアの概念では、外鼠径ヘルニアは生まれつきのものという認識でした。しかし同じ人に2度腹腔鏡手術を行ったケースで、以前見られなかった外鼠径ヘルニアが発見されたという報告もなされており、外鼠径ヘルニア=生まれついたものというわけではないことがわかってきました。
ここで注目したいのは、腹腔鏡手術の医学発展への貢献です。1回目に対側の観察ができていたからこそ、生まれつき存在しない外鼠径ヘルニアの存在を発見できたわけです。
腹腔鏡で詳細に観察することで今まで肉眼では見えていなかった解剖がわかってきた、ということは様々な分野で報告がなされています。 また腹腔鏡はそれ単独でも検査として使われることがあります。
腹腔鏡で手術をしたときに、偶然治療する疾患とは別の疾患を発見するという経験をした外科医は多いと思います。
鼠径ヘルニアに限って言えば鼠径部切開法、TAPP法、TEPP法の3つのアプローチがありますが、このうち腹腔内の観察を行うことができるのはTAPP法だけです。
これは私たちがこのTAPP法を採用している理由の一つでもあります。