1. ホーム
  2. 医師紹介・院長ブログ
  3. 胆石について知っておきたいこと -消化器外科専門医が解説!-
胆石症
所 為然外科部長

胆石について知っておきたいこと -消化器外科専門医が解説!-

こんにちは、腹腔鏡による日帰り手術を専門とするMIDSクリニックです。

本日は胆石症の原因について消化器外科専門医が解説します。

 

胆石症とはなにか

胆石ができる仕組み

胆石は、私たちの体内で胆嚢や胆管の中に形成される結石です。

その形成過程は、主に3つのタイプに分類されます。

最も多いのがコレステロール系胆石で、全体の約70%を占めています。この種類の胆石は、胆汁中のコレステロールが通常以上に濃縮された状態(過飽和状態)になることで形成されます。胆嚢の収縮力が低下して胆汁が滞留すると、その環境下でコレステロールが結晶化を始め、小さな核となります。この核を中心として、時間とともに石が大きく成長していくのです。

次に多いのがビリルビン系胆石で、全体の約20%を占めています。これは、赤血球が分解される過程で生成されるビリルビンが過剰に蓄積し、さらに細菌感染により不溶化することで形成されます。特に、胆汁中でカルシウムと結合することで固い結石となっていきます。

残りの約10%は混合型胆石と呼ばれ、コレステロールとビリルビンの両方を含んでいます。これは長い期間をかけて層状に形成される特徴があります。

胆石が形成されるリスクは、私たちの生活習慣や身体的な要因、既存の疾患など、様々な要素により高まります。特に不規則な食生活や高カロリー・高脂肪食、運動不足、急激な減量などの生活習慣は大きな影響を与えます。また、肥満の方や、女性ホルモンの影響を受けやすい妊娠・出産経験者、経口避妊薬を使用している方も要注意です。さらに、糖尿病や高脂血症、肝疾患、炎症性腸疾患などの基礎疾患がある場合も、胆石形成のリスクが高まることが知られています。

 

胆石により引き起こされる可能性のある疾患

・急性胆嚢炎

胆石症が進行すると、様々な合併症を引き起こす可能性があります。最も代表的なのが急性胆嚢炎です。これは、胆石が胆嚢管を閉塞することで発症します。胆嚢管が詰まると、胆汁がうっ滞して胆嚢内の圧力が上昇し、胆嚢壁が虚血状態となって炎症を起こします。患者さんは持続する右上腹部痛や38度以上の発熱、悪心・嘔吐などの症状を経験します。重症度は症状により3段階に分類され、軽症では限局性の炎症のみですが、重症化すると多臓器不全を伴う危険な状態となることもあります。

・総胆管結石

また、胆石が総胆管に落下すると、閉塞性黄疸という状態を引き起こすことがあります。胆管が閉塞されると胆汁の流れが阻害され、その結果として皮膚や眼球結膜が黄色く染まる黄疸が現れます。患者さんは灰白色の便や褐色の尿、全身のだるさ、かゆみなどを経験することになります。

・急性膵炎

さらに重篤な合併症として、急性膵炎があります。これは、胆石が十二指腸乳頭部を閉塞することで発症します。膵液の流出が妨げられると、膵臓内で膵酵素が活性化され、膵臓が自身を消化してしまう状態となります。急性膵炎は重症化すると命に関わる危険な状態となり、集中治療が必要になることもあります。

・胆嚢がん

長期的な合併症としては、胆嚢癌のリスク上昇も懸念されます。慢性的な胆嚢粘膜への刺激や長期の炎症により、細胞に変化が生じ、がん化のリスクが高まると考えられています。胆嚢癌は初期に症状が現れにくく、発見時には進行していることが多いため、予後が良くない傾向にあります。

 

胆石症を放置した場合、どうなってしまうか

胆石症の自然経過について、様々な研究データが報告されています。まず、発症から1年以内では、1-4%の方が何らかの症状を発現し、2-3%の方が急性胆嚢炎を、約1%の方が閉塞性黄疸を発症するとされています。この数字は時間とともに上昇し、5年以内では10-15%の方が症状を発現、15%程度の方が何らかの合併症を経験します。さらに10年経過すると、18-22%の方が症状を発現し、20-25%の方が合併症を経験、約30%の方が手術を必要とする状態となります。

年齢層による差も顕著です。40歳未満の若年層では、年間4-5%という比較的高い症状発現率を示し、一度症状が出ると70-80%という高い確率で再発します。そのため、若年層では早期の治療が推奨されています。40-60歳の中年層では年間2-3%程度の発症率となり、生活習慣病との関連が強く見られます。60歳以上の高齢層では症状発現率自体は年間1-2%とやや低めですが、一旦合併症を発症すると重症化するリスクが高くなります。

特定の合併症に注目すると、急性胆嚢炎は20年間の累積発症率が20-30%で、一度発症すると50%以上の確率で再発します。約25%の症例では緊急手術が必要となります。総胆管結石は10年以内に8-10%の方が経験し、その約半数が閉塞性黄疸を発症します。約30%の症例ではERCPなどの緊急処置が必要となります。

胆嚢癌のリスクについては、胆石を持たない方と比較して4-7倍高くなることが報告されています。特に20年以上の長期保有者では、このリスクがさらに上昇し、慢性胆嚢炎を合併している場合は10倍以上になるとされています。

一方で、適切な時期に治療を受けた場合の予後は良好です。症状発現から1年以内に治療を受けた方の場合、合併症の発症率は5%未満に抑えられ、95%以上の方が完治します。しかし、経過観察を選択した場合、20-25%の方が合併症を発症し、15-20%の方が緊急手術を必要とする状態となります。また、30-40%の方でQOL(生活の質)の低下が報告されています。

これらのデータは、胆石症を放置することのリスクを明確に示しています。特に若年層での早期治療の重要性や、高齢者での慎重な経過観察の必要性が、統計的にも裏付けられているのです。胆石が見つかった場合は、これらのリスクを十分に理解した上で、適切な治療方針を検討することが重要です。

 

まとめ

胆石症は生活習慣だけではなく、他の疾患がきっかけで生じることもあり、避けることが難しい病気です。

発見したときは無症状である胆石症は意外と多いのですが、時間経過とともに深刻な合併症のリスクはどんどん上昇します。

最も厄介なことは、胆石症を持っている方で、誰がいつ、怖い合併症に発展するか予測ができないことです。

このような心配を抱えながら生活すること自体がQoL(生活の質)を損なう要因になるため、早めの治療がおすすめです。

当院は仕事や育児で忙しい方や、家庭の事情で入院が難しい方のニーズに応え、安全で安心できる日帰り胆嚢摘出術を提供しております。

著者

外科部長
所 為然Yukinari Tokoro

略歴

2010年3月 広島大学医学部医学科卒業
2010年4月 成田赤十字病院
2012年4月 千葉大学医学部付属病院肝胆膵外科
2014年4月 千葉県がんセンター消化器外科
2017年4月 大阪赤十字病院消化器外科
2022年12月 MIDSクリニック開院
2024年2月 外科部長就任

資格

外科学会専門医/消化器外科学会専門医/消化器がん外科治療認定医/緩和ケア講習会修了

所属

日本外科学会/日本消化器外科学会/日本臨床外科学会/日本医癌学会/日本内視鏡外科学会/日本食道学会/日本ヘルニア学会/日本臨床栄養代謝学会

一覧へ戻る