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論文紹介鼠径ヘルニア
田村 卓也院長

リヒター型鼠径ヘルニア(脱腸):早期診断と治療の重要性


こんにちは。大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニックです。今回は、鼠径ヘルニアの一種である「リヒター型ヘルニア」について、最新の研究結果をもとにお話しします。

リヒター型ヘルニアとは?

リヒター型ヘルニアは、腸の一部分だけが腹壁の隙間に嵌まってしまう特殊なタイプのヘルニアです。通常の鼠径ヘルニアと異なり、診断が難しく、適切な治療が遅れると重大な合併症を引き起こす可能性があります。

最新の研究から分かったこと

最近、医学雑誌「Journal of Surgical Case Reports」(2024年10月号)に掲載された研究論文を紹介します。この研究は、リヒター型ヘルニアの早期診断と迅速な手術の重要性を示しています。

研究の概要

  • 目的: リヒター型ヘルニアの早期診断と迅速な手術の重要性を示すこと
  • 方法: 70代男性の症例を詳しく調査
  • 結果:
    • 症状:3日間の腹痛と嘔吐(普通の排便はあり)
    • 診断:CTで小腸閉塞と左鼠径ヘルニアを確認
    • 治療:緊急手術を実施し、腸を無事に戻すことができた
    • 経過:1週間で退院、2ヶ月後の検診で順調な回復を確認

重要なポイント

  • リヒター型ヘルニアは診断が難しいですが、早期の手術が非常に重要です。
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  • 腸閉塞の症状がなくても、ヘルニアによる腸の締め付けが疑われる場合は迅速な手術が必要です。
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  • 医師の高い警戒心と早期の画像診断が、効果的な治療につながります。
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日本での重要性

高齢化が進む日本では、今後リヒター型ヘルニアを含む鼠径ヘルニアの患者さんが増える可能性があります。この研究は、日本の医療従事者にリヒター型ヘルニアへの注意を促し、早期診断・治療の重要性を示しています。

当院からのメッセージ

当院は鼠径ヘルニアの日帰り腹腔鏡手術を専門としています。緊急手術には対応できませんが、この研究結果は「鼠径ヘルニアを疑ったら早めに手術を検討すべき」という重要な教訓を示しています。

鼠径部(足の付け根)に違和感や膨らみを感じたら、早めに専門医の診察を受けることをおすすめします。当院では、患者さんの状態を丁寧に診断し、必要に応じて適切な治療方法をご提案いたします。

早期発見・早期治療が、重大な合併症を防ぎ、より安全で効果的な治療につながります。少しでも気になることがあれば、お気軽に当院にご相談ください。

【参考文献】 Smith, C. R., & Chatzikonstantinou, M. (2024). Early surgical intervention is critical for strangulated Richter's hernia. Journal of Surgical Case Reports, 2024(10), rjae642.

著者

院長
田村 卓也Takuya Tamura

略歴

2012年3月 川崎医科大学医学部卒業
2012年4月 川崎医科大学附属川崎病院
2014年4月 大阪赤十字病院
2022年12月 MIDSクリニック入職
2024年2月 MIDSクリニック院長に就任

資格

外科学会専門医/内視鏡外科学会技術認定医/癌治療認定医/JATEC(外傷診療研修)修了/緩和ケア講習会修了

所属

日本外科学会/日本消化器外科学会/日本内視鏡外科学会/大腸肛門病学会/日本ヘルニア学会/日本臨床外科学会

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