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論文紹介鼠径ヘルニア
所 為然外科部長

鼠径ヘルニア(脱腸)手術後の漿液腫:最新研究から見る予防と対策


鼠径ヘルニア手術後の「漿液腫」について

皆さま、こんにちは。大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニックです。今回は、鼠径ヘルニア(脱腸)の腹腔鏡手術後に時々見られる「漿液腫」について、最新の研究結果をもとにお話しします。

最新研究の報告:「BMC Surgery」より

最近、「BMC Surgery」という医学雑誌に発表された研究で、腹腔鏡下鼠径ヘルニア(脱腸)修復術後の漿液腫(手術部位に液体がたまる状態)について興味深い報告がありました。この研究では、128名の患者さんのデータを分析し、漿液腫ができやすい要因を調べました。

漿液腫のリスク要因

その結果、以下の4つが主なリスク要因であることがわかりました:

  • BMI(体格指数)が24.5を超える
  • ヘルニアの穴が2.5cm以上
  • TEP法という手術方法を選択
  • 血液中のアルブミン値が32.5g/L未満

TEP法とTAPP法の違い

特に注目すべきは、TEP法という手術方法が漿液腫のリスクを高めるという点です。当院ではTAPP法を採用しているため、この点については患者さんに安心していただけると思います。

日本人に適したBMI基準の再検討

また、日本人の場合、欧米人と比べてBMIが低い傾向にあるため、日本人に適したBMIの基準値を再検討する必要があるかもしれません。

漿液腫の影響と対策

漿液腫ができると、痛みが強くなったり、入院期間が長くなったりする可能性があります。ただし、多くの場合は自然に吸収されていくので、過度に心配する必要はありません。

当院では、この研究結果を参考に、漿液腫のリスクが高い患者さんには特に注意を払い、適切な予防策を講じています。また、日帰り手術を基本としているため、入院期間の延長による影響を最小限に抑えることができます。

まとめ

鼠径ヘルニア(脱腸)でお悩みの方、手術後の漿液腫が心配な方は、ぜひ当院にご相談ください。最新の研究成果を踏まえた安全で効果的な治療を提供いたします。




参考文献:
Xie et al. "Risk factors and clinical impact of seroma formation following laparoscopic inguinal hernia repair: a retrospective study." BMC Surgery (2024) 24:274

著者

外科部長
所 為然Yukinari Tokoro

略歴

2010年3月 広島大学医学部医学科卒業
2010年4月 成田赤十字病院
2012年4月 千葉大学医学部付属病院肝胆膵外科
2014年4月 千葉県がんセンター消化器外科
2017年4月 大阪赤十字病院消化器外科
2022年12月 MIDSクリニック開院
2024年2月 外科部長就任

資格

外科学会専門医/消化器外科学会専門医/消化器がん外科治療認定医/緩和ケア講習会修了

所属

日本外科学会/日本消化器外科学会/日本臨床外科学会/日本医癌学会/日本内視鏡外科学会/日本食道学会/日本ヘルニア学会/日本臨床栄養代謝学会

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