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鼠径ヘルニア
田村 卓也院長

スポーツは鼠径ヘルニアの原因になるか?~フィールドホッケー~

フィールドホッケーは、そのスピード感、チームワーク、そして技術的なプレイが魅力のスポーツとして、多くの人々に愛されています。試合中の素早いパス回し、シュートを決める瞬間、そしてフィールド上での戦略的な動きは、フィールドホッケーを特別なスポーツにしています。しかし、その一方で、フィールドホッケーをプレイすることによって特定の健康問題が発生するリスクもあります。その中でも、鼠径ヘルニア(そけいへるにあ)はフィールドホッケー選手にとって注意が必要な問題です。

この記事では、フィールドホッケーと鼠径ヘルニアの関係、予防法が存在しない理由、そして治療法について詳しく解説します。また、鼠径ヘルニアが誰にでも発生しうる病気であり、フィールドホッケーをプレイする上での障害になる可能性があることも説明します。

鼠径ヘルニアとは?

鼠径ヘルニアは、腹腔内の臓器や脂肪が腹壁の弱い部分を通って外に突出する状態を指します。鼠径部(下腹部と太ももの境界付近)に発生するため、「鼠径ヘルニア」と呼ばれます。この状態は、特に男性に多く見られます。

フィールドホッケーが鼠径ヘルニアの原因となる可能性

フィールドホッケーは激しいスポーツであり、特定の動作が腹圧を高めることがあります。以下の要素が、フィールドホッケーと鼠径ヘルニアの関連性を示唆しています:

  1. 急な方向転換:フィールドホッケーでは、ボールを追いかけたり、相手をかわしたりする際に急激な方向転換が必要です。この動きは腹圧を一時的に高め、腹壁に負担がかかる可能性があります。
  2. スティック操作:ボールをドリブルしたり、シュートを打ったりする際には、上半身と腹部に力がかかり、腹圧が高まる可能性があります。
  3. 長時間の試合:フィールドホッケーの試合は長時間に及ぶことが多く、持続的な腹圧の増加が腹壁の弱い部分をさらに脆弱にし、ヘルニアの発生リスクを高める可能性があります。

鼠径ヘルニアの予防法

残念ながら、鼠径ヘルニアを完全に予防する方法はありません。腹筋を強化することや、適切なウォームアップとクールダウンを行うことでリスクを軽減することはできますが、腹壁の弱さには個人差があり、完全に防ぐことは難しいです。

鼠径ヘルニアの治療法

鼠径ヘルニアの唯一の治療法は手術です。ヘルニアの自然治癒は期待できないため、症状が確認された場合は医師の診断を受け、適切な治療を受けることが重要です。手術には主に以下の方法があります:

  1. 開腹手術:伝統的な方法で、腹壁の弱い部分を補強するためにメッシュを使用することが一般的です。
  2. 腹腔鏡手術:小さな切開を行い、カメラと器具を挿入して行う手術です。回復が早いとされています。

私達は以下の理由で腹腔鏡手術を選択しています。

腹腔鏡手術の利点

  • 術後感染リスクの低下: 腹腔鏡手術では、従来の切開手術(メッシュ修復)と比較して、手術部位の感染が有意に少ないことが分かっています。
  • 術後疼痛の軽減: 腹腔鏡手術を受けた患者さんは、術後の痛みが少ない傾向にあります。これは手術直後から術後2週間程度の急性期、さらには慢性期においても観察されています。
  • 早期社会復帰: 腹腔鏡手術を受けた患者さんは、従来の手術を受けた方と比べて、仕事に戻るまでの期間が平均して約5日短いというデータがあります。
  • 高い患者満足度: 特に術後2週間までは、腹腔鏡手術を受けた患者さんの満足度が高いことが報告されています。

まとめ

フィールドホッケー選手にとって鼠径ヘルニアは避けがたいリスクの一つですが、早期の診断と適切な治療により、健康な状態を維持することが可能です。フィールドホッケーと鼠径ヘルニアの発症には直接の関連は証明されていませんが、フィールドホッケーの動きが原因で発生する可能性があります。そのため、異変を感じた場合は速やかに医師の診断を受けることが肝要です。健康な体でフィールドホッケーを楽しむためにも、自分の体の変化に敏感になり、適切な対応を心がけましょう。

鼠径部(足の付け根)の膨らみ、しこりは鼠径ヘルニアかもしれません。平日は21時まで診療し、土日祝日も診療しております。電話やLINEで24時間相談を受け付けております。いつでもお気軽にご相談ください。

著者

院長
田村 卓也Takuya Tamura

略歴

2012年3月 川崎医科大学医学部卒業
2012年4月 川崎医科大学附属川崎病院
2014年4月 大阪赤十字病院
2022年12月 MIDSクリニック入職
2024年2月 MIDSクリニック院長に就任

資格

外科学会専門医/内視鏡外科学会技術認定医/癌治療認定医/JATEC(外傷診療研修)修了/緩和ケア講習会修了

所属

日本外科学会/日本消化器外科学会/日本内視鏡外科学会/大腸肛門病学会/日本ヘルニア学会/日本臨床外科学会

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